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第016回目

大家族主義で経営する

第16回目《大家族主義で経営する》は、第12回目の《心をベースとして経営する》という節と一対になっています。

第11回目以降から述べたように、創業してしばらくしてから1人での限界にぶつかり、次に人事というこれまでに経験をしたことのない壁にぶつかり、どのようにして経営をしていけばいいのだろうかと、私自身たいへん迷っていました。

頼れるものは何もない上、私の持っていた技術も大したことはありませんでした。
会社にあるお金は、300万円の資本金だけです。
しかし、私としては何かにすがらざるを得ません。

その時に、全従業員の心を束ね、その心を頼りにしていくしかないと思ったのです。
ただ、「心」と言っても漠然としていて不安なものですから、心が一番固く結びついているものは何かと考えてみたところ、それは家族の絆だと思いつきました。
たとえ利害が相反しようと、助け合っていけるのが親子であり、兄弟です。

そこで、会社を「家族主義で経営する」と考えたわけです。
しかし、本来会社というのは家族とは全く違うものです。
経営者の場合、会社に対する責任は有限であって、無限ではありません。
ところが、家族に対する責任というのは、無限に近いものです。

それでも、私は雇用してもうまくいかず不安でたまらなかったものですから、「わが社は大家族主義で経営をするのだ」と言ったわけです。
これは、私が本当に経営に対して悩み、気弱になり、その中で何かにすがろうとしたことの結果です。

会社経営に対する自信がなかったものですから、その弱きをこういう取り組み方でカバーしようと思ったわけです。
しかし、今になってみると、これは非常に良かったのだと思います。
中小零細企業であればあるほど、このような思想で経営するべきだと思います。

弊社では、人の喜びを自分の喜びとして感じ、苦楽を共にできる家族のような信頼関係を大切にしています。
これが一番館の社員どうしのつながりの原点といえます。
この家族のような関係は、お互いに感謝しあうという気持ち、お互いを思いやるという気持ちとなって、これが信じあえる仲間をつくり、仕事をしていく基盤となりました。

家族のような関係ですから、仲間が仕事で困っている時には、理屈抜きで助けあえますし、プライベートなことでも親身になって話し合えます。
人の心をベースとした経営は、とりもなおさず家族のような関係を大切にする経営でもあるのです。

これは、経営者と従業員、資本家と労働者という対立関係ではなくて、あたかも親子のような、兄弟のような、そういう人間関係で会社を経営していこう、互いに心から助け合っていこうと言ったものです。
ただし、そういう大家族主義でいくと、今度は親子や兄弟のように「甘え」が出てきます。
兄弟ではないか、親子ではないか、ちょっとくらい失敗があってもいいではないか、といった甘えです。

親身になって助け合うような関係でなければならないのではないか、プライベートなことでも話し合えるようでなければいけないのではないかと言っているわけですが、一歩間違うと、これは、お互いに助け合うことに留まらず、甘えの経営に(おちい)りかねません。
そうすると、効率的な経営から逸脱(いつだつ)していく可能性がありますから、次に第17回目の《実力主義に徹する》ということが大切だと考えました。
つまり、大家族主義が甘えの構造に()してしまったのでは困る、ということです。

本日は、不景気が来た時のために少し考えてもらいたいことがあります。
会社は長年の赤字続きのため運転資金が底をついてきたため大リストラを行いました。
翌年大リストラの結果、売上げ4億(経常利益3%1200万円)を残すことができました。

社長は長年赤字続きでしたから残業代を支給しておらず、また残業をしているリーダー職以上の従業員には基本給20万円の他にリーダー手当て10万円を支給していましたので残業代は支払わなくていいと考えていました。
現在の従業員数は39名で、従業員も会社の状況がよく分かっているので納得していました。
ところが、リストラをされた従業員から会社の業績が向上したことを聞きつけて残業手当の損害賠償請求がありました。

法律では残業手当の損害賠償は2年間に遡って請求することができます。
リストラされたメンバーは全員リーダー職以上の方で全員で20名×2年間の残業代300万円=6000万円の損害賠償請求でした。
会社は、1000万円程度の運転資金しか無かったので、やむを得ず破産手続きを開始することになりました。

さて、会社と従業員はどうすれば良かったのでしょうか?
また、会社と従業員はどうしておけばこのような悲劇はなかったのでしょうか?

コメント

小泉社長

(2015/05/28 09:20)

第16回目《大家族主義で経営する》はいかがでしたでしょうか?

大家族主義で経営されている会社の中には頑張っていた従業員さんがお亡くなりになった際、その方のお子様が20歳になるまでお給料を毎月支払い続けられる会社があります。

一方、倒産してしまった会社で実際にあったお話です。

社長が高齢のため2代目にバトンをパスしたのですが、2代目は社長としては力不足で、さらに管理職が育っていなかったため、赤字転落をした会社でした。
リストラされた社員の対応として、会社が破産すると残された従業員も路頭に迷うことになるので、残された社員のためにも交渉をして折り合いをつけなければならなかったと思います。

それよりも、リストラというのは大会社がすることであり、大家族主義で経営をしていくべき中小零細企業には合わないのです。
そこで、社長は黒字にするために早期に社員の育成に取り組まなければならなかったと思います。
従業員さんたちも会社が黒字になるようにスキルを磨き、能力を高め、素晴らしい考え方を身につけて会社を早期に黒字にしなければならなかったと思います。

さらに、2代目社長に社長の力がなかったなら、初代の社長はバトンパスする期間を長く設けて、社長の育成に取り組まなければならなかったと思います。
それでもうまくいかなかったのであれば、最終手段として、リストラをしたら利益が出るということですから、会社に貢献ができるそれぞれの能力に合った待遇に見直すべきであったと思います。

鈴木さん

(2019/07/19 13:47)

数年前と比べて現在の働き方に対する考え方が変わってきているのは周知の事ですが、「家族主義」という考え方は今も昔も変わらない考え方だと思います。
「甘え」に関しても、考え方ひとつで良くも悪くもなると思います。


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