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第078回目

両極端を持ち合わせそれを正常に機能させる / 大胆さと細心さをあわせもつ

経営者や従業員が物事を判断していく場合、時には大胆に決断しなければなりませんし、また石橋を叩いてでも渡らないというくらい、細心かつ注意深く判断を行わなければならない時もあります。

つまり、「大胆さと細心さをあわせもつ」ことが必要になるわけです。
このことを、「一番館の行動指針」では、次のように説明しています。

大胆さと細心さは相矛盾するものですが、この両極端をあわせもつことによって初めて完全な仕事ができます。
この両極端をあわせもつということは、「中庸(ちゅうよう)」をいうのではありません。

ちょうど(あや)を織りなしている糸のような状態を言います。
縦糸が大胆さなら横糸は細心さというように、相反するものが交互に出てきます。
大胆さによって仕事をダイナミックに進めることができると同時に、細心さによって失敗を防ぐことができるのです。

大胆さと細心さを最初からあわせもつのは難しいことですが、仕事を通じていろいろな場面で常に心がけることによって、この両極端を兼ね備えることができるようになるのです。

「大胆さ」と「細心さ」を綾織(あやお)りのように織りなしていく。
常に大胆であってもいけませんし、いつも細心であってもいけません。

また、その真ん中であれというものでもない。
恐ろしいほどの大胆さと、じれったくなるほどの細心さ、その両極端を兼ね備えていなければならないのです。

この「両極端」とは、資本金以上の投資を決める大胆さと、わずかな額の投資でも遽巡(きょめぐる)し、考えに考えた後で結局行わないというような細心さだけではありません。
ものすごく情が深く、優しい人間性を持っていながら、時にはズバッと社員のクビを切るという冷酷さ、非情さということもあります。

あるいは、たいへんな理論家で、合理主義一点張りに見えて、一方では人情的、感覚的な一面も持っているということもあるでしょう。

つまり、大胆さと細心さ、温情と冷酷、合理性と人間性、それぞれ両極端の性質が、1人の人間の中に綾を織りなすように存在しているわけです。
そして、大胆でなければならない時に大胆さを出す、細心でなければならない時に細心さを出すという具合に、それぞれの性質を状況に応じてうまく機能させる能力がなければなりません。

日頃従業員さんや後輩を大事に思っていながらも、一方で、新入社員が入ってきて、顧客の引継ぎの時に先輩従業員が「この客はまったく買いませんよね~」など愚痴をこぼす社員に「帰れ!」と怒鳴り帰らせたこともあります。
そして、「いつも従業員を大事にすると言っているのに、その社員を急にクビにするなど、社長は何と訳の分からないことをしているのか。」と思われるかもしれませんが、そのような社員がいると会社がうまくまわらなくなると直感的に分かるのです。

経営をやっていれば、このように両極端の性質が交互に出てくるものですから、「自分は二重人格ではないだろうか?」と悩むこともあると思います。
しかし、そうでなければ経営というものはできません。

「ウチの社長は、分裂症(ぶんれつしょう)ではないか?」と、従業員から精神病患者扱いされることがあるかもしれません。
逆に、経営者が「ウチの社長は人がいい。」と社員から言われているような会社は、大抵経営がうまくいっていないものです。
いつもお人好しの経営者では、事業がうまくいくはずがないからです。

もちろん、「ウチの社長くらい冷酷で厳しい人間はいない。」という会社もいけません。
人が好きすぎてもダメ、悪すぎてもダメ。
弊社のような小さな会社では、ひとりの人間がその両方をあわせ持っていなければならないのです。

このことは、一見、矛盾しています。
しかし、その矛盾を矛盾とさせない人が天才なのです。
経営者でも政治家でも、従業員でも、素晴らしい仕事を成し遂げた人の伝記などを読むと、矛盾したものを持っていた人が多いことが分かります。

それと比べるわけではありませんが、私自身も矛盾したものを持っています。
2011年は東北地方太平洋沖地震が発生して日本が沈黙をしている中、1000万円もするQSSのプリンタを購入したあれほど大胆だった自分と、今パソコン1台の追加購入に設備過剰ではないかとビビっている自分と、「どっちが本当の自分なのだろう?」と、ふと悩んだことが何回もありました。

日頃は非常に優しい、部下思いの私であったのに、ある時「泣いて人を斬る」自分がいた。
そのくらいの不正で部下をクビにしなくてもいいではないかと思う私と、いや、小さな不正かもしれないが、これをこのまま放っておいたのでは組織全体が死んでしまうと断罪する非情な私、どちらが本当の私なのだろう、と思ったものです。

2008年のリーマンショックでは、その半年ほど前から実は経済が非常におかしくなっていてほとんど売れませんでした。
そして、2008年のリーマンブラザーズの倒産でリーマンショックが明らかになると、「こんな経済状況だからどうしようもない。」と不協和音が一気に噴出しました。

しかし、リーマンショックのような経済状況の時ほど全従業員が一致団結して、「新商品開発」や総務や経理やオペレーターも営業に出て仕事を取ってくる体制ができないと会社は維持できないのです。

高額で娯楽品であるマッサージチェアメーカーのファミリーさんはリーマンショックの時にはまったく売れませんでした。
ところが、この不景気も何年も続くわけがない、この不景気に新商品開発をし、社長秘書もやることがないので、大型家電売り場でやったこともないマッサージチェアの売り場に立って必死に明日のために営業活動をしていました。

そのような中、悩んでもなかなかうまくいかず、二重人格者に思える自分自身を次第に信用できなくなってくる。
このような悩みを社員に言えば、経営者としての信用を失いますから、悶々と1人で悩んでいました。

その時に米国の作家、F・スコット・フィッツジェラルドの言葉に触れたわけです。
それは、次のようなものでした。
「第1級の知性とは、両極端の考え方を同時にあわせ持ち、かつ、それらを正常に機能させることのできる人間である。」
大胆であるべきところで大胆であり、細心であるべき時に細心でなければならないのです。

つまり、両極端を正常に機能させなければならないのです。
この言葉を知った私は、「ああ、自分は二重人格じゃなかった。正反対の性質を持っていても、それは矛盾ではないのだ。」と安心しました。

皆さんにも、温情的な一面と、冷酷な一面とがあると思いますがいかがでしょうか?
部下を持ったり、家庭を持った時に、組織や家庭を維持できないと感じる行動や発言があった場合に必ず思い悩むことがあると思います。
その際にはぜひ一番館の行動指針を思い出して判断をしてください。

推薦図書:ビジネス〈勝負脳〉脳科学が教えるリーダーの法則 / 林成之(著)

コメント

小泉社長

(2015/08/05 13:18)

第78回目《両極端を持ち合わせそれを正常に機能させる / 大胆さと細心さをあわせもつ》はいかがでしたか?

今、私は、大胆さと細心さ、温情と冷酷、合理性と人間性の両極端をあわせもち、かつそれを場面に応じて使い分ける能力が必要だと言いました。

これがいかに難しいことか、少しお話ししてみようと思います。

たとえば、本田技研さんが成功したのは、スパナとハンマー1本で、素晴らしいエンジンやオートバイを作ることができた本田宗一郎というモノづくりの天才と、会社を経営するという面で、計数に明るく銭勘定のできる藤沢武夫という名番頭の2人が揃っていたからです。

また同様に、松下電器さんは、あの松下幸之助と、これも名番頭と言われた高橋荒太郎の組合せがあり、ソニーさんの場合、技術者である井深大と、営業手腕に長けた盛田昭夫のコンビがあったから、それぞれ発展したと言われています。

つまり、両極端の性質を1人の人間が持つことは難しいので、自分の不足を補う名参謀、名番頭が必要になるわけです。

ところが中小企業には、この例はあてはまりません。
人材不足の中小企業で、そのような格好の補佐役が簡単に見つかるはずがないからです。

たとえば、小学生のサッカーチームを作る時、ガンバ大阪やセレッソがジュニアユースの募集をすれば数百人の応募があり、その中から優秀な人材を絞れば一級品のFWやゴールキーパーが揃いますが、1クラス数人しかいない田舎の小学校でサッカーチームを作ろうと思うと、募集をしても11人集まらず、キャプテンが上級生や下級生に声をかけても11人集まらないまま練習がスタートし、試合に出られないので、11人揃うまで応募の声かけをしながら練習をする。
これくらい大企業と零細企業では差があります。

ですから、中小企業では、最初経営者が相矛盾する両極端の能力を兼ね備え、かつ正常に機能させていかなければなりません。
そして、従業員の中から生え抜きが現れる。

しかし、それでも零細企業の経営者や従業員ですから大した才能があるわけでもないのに、一流の高いレベルの能力を要求される。

現実のところお客様からの要望は非常に高く、また、競合他社は大企業ですから泣いてでもそれをやらなければならないのです。

私自身、能力不足を感じながらもそれができるように頑張っているつもりです。
みなさんも近い将来この項目で述べられているようなことが求められる日がきっと来ると思います。
たとえば、オフィス事業部に配属されて、学校を卒業したばかりで教えてもらう立場なのに商談を取り仕切って注文を受け、新人なのに納品の工程を考えて、何年も仕事をしている人たちを段取りよく取り仕切るような立場になるかもしれません。

大企業に勤めていたら、営業の使い走りで何も考えなくても良かったかもしれません。
しかし、零細企業では大胆にかつ合理的に人を動かさないといけないかもしれません。
時にはお客様にご迷惑がかかると判断した時には、冷酷な判断をしなければならないかもしれません。
この項は弊社のような零細企業で仕事をしていくのに非常に大事なことですので、ぜひ理解していただきたいと思います。

大企業で能力があるのに下っ端の仕事しかさせてもらえず、上司の愚痴ばかりをこぼしているよりは、零細企業で「人材不足だから入社して間もないけどこんな大きな仕事を取り仕切ってやったんだ。」と言っている方が苦労はするかもしれませんが幸せだと思います。

前田さん

(2019/01/26 15:00)

自分にはいい意味での大雑把さが足りないと思います。
弱点は改善しつつ、複数の視点を持って、仕事に取り組みたいと思いました。


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