「必要なものを必要な分だけ購入する当座買い」には大きなメリットがある
一番館の場合、材料は必要な分だけしか仕入れないということが原則になっています。
これは、「健全資産の原則を貫く」とは少しばかり意味が違いますが、何かの役に立つと思いますのでお伝えします。
昔の貧家というのは、その日暮らしの生活をしていました。
ご主人が1日一生懸命に働いて日当をもらい、その日に食べるお米を買いに行きます。
貯蓄などありませんから一斗(15kg)まとめて買うようなことはできず、お米は一升(1.5kg)買い、味噌や醤油も同じように秤売りで買います。
その日の暮らしに使う分だけ少しずつ買う、これが昔の貧家の典型的な暮らしでした。
私は、一番館においても資本金300万円ではじめた会社でしたので、貧家の人がやっていたような当座買い、「今要る分だけを買う」ということしかできず、現在も「今要る分だけを買う」ということが原則となっております。
一般の企業では、少し余裕ができると必要な資材はできるだけまとめ買いをして、安く買おうとします。
普通はそれがモノを買う時の常識ですが、一番館はそれとはまったく逆の「使う分だけしか買わない」ということを基本に事業を行ってきました。
そうするとどうしても高くつくものですから、なぜ、そのようなバカげたことをするのかとみんなが聞いてきます。
私はその真意を分かってもらうために、私の父の例を引いてみんなに説明しています。
父はよく、ドラッグストアやホームセンターに買い物に出かけると必要な数以上に購入してきます。
たとえば、電球を12個ほど必要なので買いに行くのですが、倍の24個ほど購入します。
手袋や帽子などもそんな調子で買ってきます。
従業員さんもいるから、家でも使うかもしれないから買ってくるのですが、父は非常にいいことをしていると思っているわけです。
ある日学校から帰って来ると、父が倉庫で汗だくになって掃除をしていました。
倉庫の中を見てみますと、以前ホームセンターで買ってきた懐中電灯や手袋や帽子が傷んでいるので、父が慌てて取り出しながら掃除をしていました。
父は、傷んで使えなくなったものと使えるものを分けていました。
私はそれを見て、「なるほど。まとめ買いで安く買ったと思っても、これくらい高くつくものはないな。」と思ったのです。
このように、必要なものを必要な分だけ購入する当座買いは、一般には高くつくだけで常識に反するやり方だと思うことでしょう。
ところが、そうでもないのです。
それは、実に合理的な買い物の仕方なのです。
なぜなら、必要なものを必要な分だけ購入する当座買いは高くつきますから、必要な分だけしか買いません。
人間というのは面白いもので、必要ギリギリの数しかないと思うと、どんな物でも実に丁寧に大事に使うようになります。
ところが、それが倉庫に山ほどあるとなると、どうしても粗末に使ってしまいがちです。
つまり、父が懐中電灯や手袋を余分に買って倉庫整理で悪戦苦闘しているのとはまったく逆の現象が起きるわけです。
たとえば、製造工場で品物を1000個組み立てようとする時に、1005個分しかビスやボルトといった部品がないとすると、ビス1本落としても何とか探し出そうとします。
反対にビスが山ほどあると、1つや2つなくなってもまったく気になりません。
大量にまとめて安く買ったつもりが、結局はロスを生じさせて安くならないことになります。
さらに、床にビスが散乱する事になりますので、仕事場の環境も悪くなります。
そこに、当座買いのメリットがあるわけです。
また、必要な分しか買わなければ倉庫も要らない、そのための管理費も必要ありません。
さらに、在庫ではありませんから、在庫金利も発生しません。
一番館では、今もなお生きているこの「必要なものを必要な分だけ購入する当座買いの原則」には、たとえ若干高くつくとしても、それを補ってあまりあるメリットがあるのです。
コメント
峯村さん
(2018/05/19 16:28)
繁忙期・閑散期での発注・購入時期や数量の見極めが大事だと感じました。