全従業員に原価意識が備わっていなければならない / 採算意識を高める
一番館では、「時間あたり採算制度」を実施し、職場での仕事の結果が誰にでもはっきりと分かるようになっています。
社員1人1人が経営者の意識をもって、どうすれば自分たちの「時間あたり」を高めていけるかを真剣に考え、実践していかなければなりません。
常日頃、鉛筆1本やクリップ1つにいたるまで、ものを大切にしようと言っているのは、こうした思いのあらわれです。
床にこぼれ落ちている原料や、シュレッダーの片隅に積み上げられている不良品が、まさにお金そのものに見えてくるところまで、私たちの採算意識を高めていかなければなりません。
「日々採算意識を高めていこう」と、全社員に強く訴え続けております。
この「採算意識」とは、「原価意識」ということです。
つまり、仕事をする以上は、すべてに対し原価意識をもって仕事をしなさいと言っているわけです。
「採算を合わせる」と言えば、即「利益を得る」という意味に取られがちですが、そうではありません。
それは常に「原価を考える」ということであって、このことが採算を向上させる鍵になるのです。
仕事をしていく中で、コスト、つまり原価はどうなっているのかを考えずに、会社の経営がうまくいくということはないはずです。
たとえば、ホテルのレストランで食事をしているとしましょう。
レストランのなかは閑散としていて、何人ものウエイトレス・ウエイターが手持ちぶさたにそこかしこに立っている。
見渡せば、数少ないお客さんは、1,000円から1,500円のカレーライス程度のものを食べているようだ。
私など、そういう時はいつも従業員の人件費、レストランの1日の売上などをパッパッと頭の中で計算して、「ああ、これじゃ採算は合わないな。」などと考えてしまいます。
自分が手がけている仕事はもちろん、いろいろな場面で、その一瞬一瞬で原価意識をもって物事を考えることができるか、それともただ漠然と見ているだけなのか、それによって経営には大きな違いが出てきます。
日常をただ漠然と過ごしているようではいけません。
いつ何時でも、原価を意識していなければならないのです。
さらに具体的にお話ししますと、たとえば会社である仕事を新人に頼んだとします。
ところが手際が悪くて、わずか1枚の紙にまとめた内容をワープロに打って持ってくるだけなのに、その作業に半日もかかっている。
弊社のスタッフには時間あたり3,000円以上で動いてもらうようお願いをしております。
それを2で割れば、30分1,500円です。
さらに4で割れば、15分750円です。
そう考えれば、ただウロウロして過ごしている社員が目障りになってくる。
750円があの辺をウロウロ、この辺をウロウロ、何にもしないでふらついているのを見るにつけ、年始に立てた予算は達成できないのではないだろうか、さらに会社が赤字決算になるのではないだろうか、ともうたまらない思いがします。
そう思うのは私が経営者だからでしょうが、従業員さんにも「あなたには、15分当たり750円の仕事をしてほしいのです。だから、15分間でそれ以上の価値を生み出してもらわないと、会社の予算が達成できないのです。」と学校を卒業したばかりの子には教えてあげなければなりません。
すべての従業員さんがそのようなことを意識するようになれば、たとえば1時間ロスをしたら、次の1時間は倍の6,000円分の仕事をしようと思うようになってくれると思います。
責任者が「あなたは午前中、ボーッとしていたでしょう。それであなたは3,000円を無駄にしたことになるのです。」と、いちいち従業員さんに面と向かって言えば、非常にきつい印象となり、反発を受けるかもしれません。
しかし、従業員さんの方から自発的に「考えてみれば、今日は午前中ずっとボーッとしていた。会社に3,000円の予算の誤差を発生させてしまった。」と考えてくれるようになれば、必ず経営はうまくいくはずです。
つまり、この項目でいっていることは、「いま自分がここでこうしているだけで、いったいどれくらいのコストがかかっているのか」ということを、全従業員さんは常に意識しなければならない、ということです。
そういう意識を持っているのは経営者くらいのものですから、ついつい従業員さんのやることを黙って見ておられず、イライラして当たり散らす。
ところがこれだと逆効果になってしまって、ちっとも採算を向上させようという方向に向かいません。
一方、従業員さんが経営者と同じような意識を持っていれば、「そんなことをしていたのでは採算が合わないじゃないか。」という経営者の言葉に、すぐにうなずいてくれるはずです。
みんなが常に原価意識を持っていれば、経営者の苦労も分かってもらえると思います。
そのような意識は会社のなかにとどまらず、ホテルのレストランであろうと、ラーメン屋であろうと、何を見ても「この商売はうまくいっているのだろうか?」と、すぐに頭の中で試算を始めるくらい強いものでなければいけません。
そういう習慣が身についていれば、自分が新しい事業を起こすという場合に、十分に採算が合いそうだ、あるいは、このような事業は誰がやっても難しいかもしれないな、などということが、ちょっと計算するだけで分かるようになります。
仕事中でも、遊んでいる時でも、常に原価意識を働かせて物事を見る。
そうすれば、ビジネスチャンスはぐっと広がってくるのです。
そのような原価意識を従業員さんにも持ってもらうよう話をしていく。
そうやって、原価に対して敏感な従業員さんを1人でも多くつくることが、会社の採算を向上させることに直結すると考えてお話をしています。
コメント
川邉さん
(2016/01/24 12:00)
時間あたりの計算について、1時間3,000円というとあまり実感の持てない数字に感じるが、15分750円と考えると少し身近に降りてくる間隔がする。
15分きざみで、750円の仕事ができているか?
15分あたり750円以上の採算が取れる仕事をするにはどうすれば良いか?
など、考えながら仕事ができなければならないなと感じた。
小泉社長
(2023/01/31 20:21)
第173回目《全従業員に原価意識が備わっていなければならない / 採算意識を高める》はいかがでしたでしょうか?
2022年1月、イメージング事業部が2週間以上出荷が遅れてしまうという大失態劇がありました。
その時に利益率を度外視しまして常に1,000枚以上プリンタージョブが維持できるようにアシスタント(持ち上げ担当)を入れました。
当然利益率が落ちると考えていたのですが、逆に利益率が上がったのです。
それからはスタッフが一時的に余ったとしてもプリンターを回し続けることの方がお客様のためになるばかりではなく、会社の利益にも貢献することが分かりましたので常に配置をすることになりました。
さらに、小さなお子様がおられる主婦さんがお休みをした際にこれまではプリンターが動かずに止まっておりましたが、常にアシスタントを配置することで1人休んでもプリンターが全台稼働するようになりました。
スタッフが余りすぎるのは良くないのですが、少しばかり余力を残して臨機応変に対応できるようにしておくことの方が良いようです。