歩留まり向上はまず製品を観察することから
私は、現場に出ては自分で一生懸命に製品を見るようにしています。
肉眼でよく見えない時は、ルーペを使って1時間でも観察していました。
そうすると、まるで製品が人であるかのように思えてくるのです。
そして、製品に欠けを見出したなら、「この子(製品)はどこでケガをした(欠けた)のだろう?」と、実際の工程を思い浮かべながら推測していくわけです。
仕様の厳しい製品になると、不良率が1%とか0.5%になることもあります。
そのいちばん典型的なものが、大判プリントです。
プロの写真館も力が入る大判プリントですが、小さな0.2~0.3ミリ四方の不純物がほんのわずか混じるだけで、4切ワイドのような大判プリントがすべてダメになってしまうのです。
たとえばこんなこともありました。
2014年頃に、前田写真館さんから6切ワイドの背景が真っ黒の写真にはいつももやもやと気持ち悪いものが写っているというご指摘を受けたので、太陽の下で見たりルーペで見たり徹底的に調べました。
しかし、どうしても分からず、考えて数ヶ月が経過した頃、ふとロール交換の時に残りのペーパーに光沢のはずなのですが少し模様があることに気づきました。
早速、生のペーパーを送り確認してもらったところ、まさにその模様でした。
レベルの高い写真館さんになると、現像する前の生のペーパーのわずかな模様まで見えるのです。
このクラスの写真館さんを相手にするということは、もうミクロの世界で戦わなければならないということです。
つまり、1ロールの印画紙から何枚の良品が取れるかという歩留りの勝負です。
最初の頃は惨めなもので、1ロールの印画紙から50%くらいの良品しか取れませんでした。
そのために大判のロール紙は大変高価だったわけですが、やがて歩留りが上がって、1ロールの印画紙から99%~99.99%の製品が取れるようになると、たちまちに利益があがっていきました。
このような歩留り向上は、まず製品をじっくり観察することから始まります。
そうすると、どこが痛いのか、また、どこでケガをしたのか、製品が語りかけてきます。
それによって、工程のどの部分に問題があるのかを突き止めるのです。
今、「語りかける」と擬人法を使いましたけれども、事実、そのような心境になるくらい真剣に製品を見つめることが大切なのです。