能力には歴然とした差がある
会社を経営していて、会社が発展していくと、必ずといっていいくらい遭遇するのが能力の問題です。
私は人間がもともと持っている能力にはそう差はないと思っていますし、親からもみんな一緒と教わってきました。
今も、ある程度までは熱意と考え方が良ければ能力というのは仕事には関係がないと考えています。
結局は人間の考え方で物事は決まってくると考えているのです。
ところが、会社や事業を経営するというようなステージにまで来ると実はそうではないのです。
持っている能力というのは、やはりものすごい差があるのです。
日々の努力で能力を伸ばしたとしても、縮めようがないくらいその差はあります。
経営者の場合、会社の数字が歴然と出てきますので能力の差を素直に認めることができるのですが、従業員さんは他社の責任者(管理職)の方と比べる数字(データ)がそれほどありませんから、どうしても能力の差があることを認めたくない。
だから、自分の周囲の人たちの能力の差も認めないということになります。
ところが、正直なところ、能力の差というのは歴然とあるわけです。
一番館は最初、デジカメとパソコンから始まり、プリンタや複合機と徐々に取扱商品が増えていきました。
現在ではオフィスに必要なものすべてを取り扱いし、20年くらい経営をしてきました。
2004年頃、帯状疱疹を患ったことから従業員さんを雇うようになり、悩みながら「心を高める、経営を伸ばす」というような本を読んで実心・実学・実践してきました。
そこで、自分自身がどういう山に登ろうとしているのか、それにはどういう人材を育てなければならないのかを考え始め、従業員さんと共有するようになったわけです。
そのような経緯を経て、現在の考え方に変わってきたわけです。
考えてみますと、弊社のような零細企業に応募してくれる従業員さんは、私の考え方など当然まったく知らず、何をしている会社なのかも知らず、たまたま見た求人情報の採用条件を見て応募してくる人がほとんどです。
これは少しきつい表現かもしれませんが、一番館のことを知らず来てくれた従業員さんというのは、バイト感覚や良くても契約社員程度の志しで応募してくれるわけですから、私がいくら行動指針で人材教育を行っても立派な社会人にまで育ってくれないのです。
最初、私は従業員さんに「私と同じように考えて行動してほしい。全員営業で注文を取り、全員で仕事をする。そうしたら100億円の高収益企業はすぐにできると思う。それができたらお給料も他所よりたくさん渡せる。」と言っておりました。
そして、そういうつもりで人材教育をしながら仕事をし始めたのですが、まったく言う通りに動いてくれず、自分が採用したにもかかわらず従業員さんが大変頼りなく見えました。
そのような従業員さんに「ああでもない、こうでもない、私がこうしているのだから、○○さんもこうしてください。」と一生懸命言っているのですがまったくうまくいきませんでした。
これはやっぱり無理なんです。
よく夫婦の関係でたとえられますが、「割れ鍋に綴じ蓋」なのです。
似たもの夫婦ということです。
つまり、会社の規模・社格に合うような従業員さんしか来なかったわけです。
今の表現で言えば、割れ鍋に合うような蓋がかぶさっていただけなのです。
割れ鍋は病気をして、マンパワーの限界を痛感した。
これではいけないというので、割れ鍋の割れたところを修復するだけではなく、もう一回溶鉱炉に入れて溶かし、より大きな鋳型に注ぎ入れ大きくなろうとしている。
つまり、割れ鍋どころか、割れた部分を直した上に、さらに100億という何倍も大きい鍋になろうとしているわけです。
その鍋に、割れ鍋の時の綴じ蓋が合うわけがないのです。
入れたらプカプカ浮く上に、半分欠けたような蓋ですから、どう工夫しても蓋にならないわけです。
その蓋に「大きくなれ、大きくなれ。」と言ってみたところで、つくり直さなければならないのです。
鉄の鍋を溶かして、新しい鋳型にはめて原形をとどめないくらいつくり直そうとする。
そして、社員にも「お前も俺と同じようにもう一回蓋を大きくつくり直せ。」と一生懸命言っているのです。
ですが、それをプラスに聞いてつくり直そうとしてくれないどころか、「この社長は何を言っているのだろうか?」と不満を持つようになる。
つまり、私にそのように言われて、「そうか、100億を目指すにあたって、俺にも期待をかけてそう言ってくれているのか。それなら俺も頑張ろう!」というような思いをしてくれるならいいのですが、そうならないのがその人の器なのです。
私の場合は、誰かに言われなくても、自分で本を読み、経営者の勉強会に参加をし、自分で変革をしようとします。
ですが、従業員さんは目を丸くしてびっくりしている。
私が直に話をしても、そのようにならないのであれば、それも能力です。
能力のあるなしではなく、そうなろうとしないことも能力です。
つまり、それだけの器なのです。
ですから、初めて責任者になり初めての部下をもつ時にたいへん悪いのですが、あなたが望んでいるように部下は動かないということを肝に銘じておいてください。
コメント
川邉さん
(2016/09/13 18:35)
行動指針のどのあたりだったかは忘れてしまったが、自燃性・可燃性・不燃性などに人を分類できるという話があった。
スタッフ1人1人がどういうタイプの思考をしているのかを日々の観察や対話の中で理解して、それぞれに合わせた言い方で「大きな蓋に作り直してくれ」と伝えることができれば、うまく歯車を回すことができるのではないかなと感じた。
100%、望んでいるとおりに他人に動いてもらうことは大変難しいことだが、その人が少しでも燃えやすいように環境を整えてあげることくらいなら他人の立場からもできるのではないかと思う。