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第226回目

人は立場や時の流れに応じて変わる

大きい会社であれ、零細企業であれ、多くの社員を責任者や役員に登用したが、責任者や役員として責務をまっとうしていないという人が出てきます。

それは昔からよくある話です。
江戸時代くらいの落語か何かにあった話です。

天気予報が大変うまく当てられるという乞食(こじき)がいた。
橋の下に住んでいて、「明日は雨だ」と言うと、必ず雨が降る。
天候に対する素晴らしい予知能力がある。

その噂が広がり、殿様が「それは良いことを聞いた。戦をするにしても明日の天気がどうなるかということが予測できるなら、大変素晴らしい!その男を召し抱えたい。連れてまいれ。」というので、その乞食は殿様の前に()し出された。

しばらく様子を見ていますと、なるほど噂の通り、正確な天気の予測ができる。

では、禄高(ろくだか)(与えられる俸禄(ほうろく)の額)を与えて、お城に召し(かか)えよう、ということになった。
ところが、召し抱えた途端、バッタリ当たらなくなってしまった。

なぜ当たらなくなったか。
よくよく調べてみると、昔は橋の下に住んでいて、風呂には入ったこともなかった。

雨が降る前日、湿気が多くなると、特に体がべ夕べタするようになる。
それで「明日雨かな」と言うと当たる。

ところが、キレイに着物でも着せてお城に上げてみたら、まったく当たらなくなった…というのです。

つまり、人は立場や時の流れに応じて、変わるものなのです。
いろんなことで大変優秀そうに見えても、それがなぜ優秀なのか、その実態をよく知っていなければならない。

ただ単に、今やっている仕事が大変うまくやれるから、というのでそれを登用して管理職に上げていった場合、実は管理職として能力がなかったということもあり得ます。
つまり、現場で働いている時には非常に優秀に見えたけれども、管理職に上げてみたら、まったく使いものにならなかったということがいくらでもあるのです。

これは何も一番館だけの問題ではなく、どういう組織でも当然あり得るわけです。
あり得るものですから、自分の会社の中で、それをすることが本当にいいのか、せっかく責任者や管理・役員にして本人も張り切っていたのに、冷たくそれを降格させれば、いろんな問題が起こってこないだろうか、というので悩むのです。

このようなことが起こる可能性が高いと分かっているのなら、最初から降格してもらうということがあるとお話をしておくべきだと思います。
また、そういうことは今後もあり得るということをみんなに分かってもらうためにも、一般社員にも話をしてもいいのではないかという気がします。

これはまさに、会社の社員との人間関係・信頼関係の問題です。

ですから、責任者からの降格というドラスティックなことをしても、なおかつ部下がついてくる、また部下が従来通り信頼し尊敬し続けてくれるという土壌がなければ安易に責任者にしてはいけないと思います。
しかし、その土壌が作れず「○○さんを責任者にしたけれど、今の○○さんの仕事ぶりでは責任者としては駄目なのだ。」ということを、言わなければならないことがあります。

もし社内でその人がメンツを失うのが忍びない、また従業員と社長との信頼関係を傷つける、というのであれば、私は他の仕事をしてもらうことも一つの方法だと考えています。
責任者から降ろして、一般社員になるのが大変問題であるとすれば、他の部門を見てもらうということも考えられると思います。

2009年11月、私の父親が亡くなり、葬式に立会いました。
実はそこの葬儀屋さんの担当者が、私が舌を巻くほどの人でした。

その人は、気が利いて、見積りもすれば病院へ来て父の引き取りもしてくれる。
式の準備から最後の支払いまで現場のすべてをやっていました。

驚いたのは、「1人は位牌(いはい)を持ち、1人は写真を持ち、1人は骨壷(こつつぼ)を持ってもらいます。」と、彼が一生懸命言うのです。
今まで進行役をしていたかと思ったら、次は経理までやっている。

ですから、二役も三役もやっていたわけです。
「こんな気の利いた男がいたら、素晴らしいのに。」と思いました。

しかし、ここから仮設なのですが、このような現場でよく気が利き、お客様が満足するような葬儀一式が()り行える人であっても、役員として数字をベースに経営すること、また部下の人たちを薫陶(くんとう)し、指導し、リーダーの役目を果たしていくことには問題があることもあります。

そうであれば、先ほどの例のように本当は乞食のままにしておけば、一番能力を発揮してくれるのです。
乞食の時は大変優秀で天気を予想ができたのに、城へ上げてしまったためにまったく能力がなくなった。
そして、天気を当てられる以外に能力はないわけですから、天気が当たらなくなってしまうと、使いものにならないわけです。

ですから、社内では他の人が若干何か言う人が現れるかもしれませんが、「○○さん、すみませんがもう一度、責任者ではなくて現場の仕事をやってくれませんか?」ということを話して、もし本人が「社長、結構ですよ。私は、責任者を降りてまた現場で頑張りますよ。」と言ってもらえる土壌が必要であると思います。

本人が納得していれば、はたからなんと冷たい社長と思われようが何だろうが、降格もあり得るということをみんなに習慣づけるという意味からも実行してもいいと思います。
しかし、それが非常にできにくいのであれば、さっき言ったように他の部門をやってもらうという方法もあります。

それができるように、もう少し多角化を進めていかなければならないと思います。

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