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第062回目

エビングハウスの忘却曲線

記憶と忘却(忘れるという意味)時間の関係を理解するには、まず、「エビングハウスの忘却曲線」という、超有名な実験結果を知る必要があります。

ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、意味のない3つのアルファベットの羅列(られつ)を被験者にたくさん覚えさせて、その記憶がどれくらいのスピードで忘れられていくかを実験し調べました。
その結果をグラフ化したのが、「エビングハウスの忘却曲線」です。

記憶はどれくらいのスピードで忘れられていくか?
この実験から、20分後に42%、1時間後に56%、1日後に74%、1週間後に77%、1ヶ月後に79%が忘れてしまうという結果が出ました。

この結果から分かったことは、
1. 記憶は、覚えた直後にどっと(半分近く)忘れてしまう。
2. 残った記憶は、ゆっくり忘れていき、長く保持される。

■記憶を忘れにくくする方法

ただ、「人間は忘れる動物である!」と示しただけでは、何の意味も持たないので、その結果を利用して、忘れにくくする方法を考えてみましょう。

このグラフは、同じエビングハウスの忘却曲線に、定期的な復習をした場合の記憶率を記入したものです。
つまり、「人間は忘れる動物である!」という事は事実だが、「定期的に復習をすれば、その記憶は確実に定着していく!」という事の方が、もっと大切であるという事です。

■効果的な復習のタイミングとは

では、どのタイミングで復習すれば効率的なのかが重要です。

エビングハウスの忘却曲線

上記のグラフを見れば、いつでも復習さえすれば、記憶はよみがえります。
そして、そのたびに記憶の定着率はアップしています。
ただ、やはり人間は忘れる生き物なので、すぐに忘れてしまうのです。

もし、テストが2週間後なら、いつ復習すればいいのでしょうか?
2週間前に復習しても、結局すぐに忘れてしまうのです。

記憶は、覚えたそばから急速に忘れはじめて、1日たったその後は、ゆっくりとしか忘れていきません。
つまり、テスト直前に復習すれば、よいということになります。
しかし、本当にそうでしょうか?

■反復しない記憶は、短時間の使い捨て記憶

ポイントは、
1. 何のために(いつまで)記憶するのか?
2. どれくらいの完成度で記憶するのか?
という事です。

もし、そのテストの時だけ記憶しておけば良いのなら、直前がベストです。
そして、100%の正確な記憶が必要でないのなら、直前でもOKです。

つまり、記憶しても、反復して復習しない限りすぐに忘れてしまうし、テストで正しくこたえられる記憶の数は、100%ではなくなってしまいます。
そんな記憶法は、一時的に合格点をもらうには優れているかもしれませんが、結局、記憶に費やした時間や努力は、無駄に消え去ってしまいます。
これは、人生を無駄にする使い捨て記憶法だと思います。

■再認可能忘却と完全忘却

では、できるだけ早めに復習をするのは、何が優れているのでしょうか?

決定的な違いは、このグラフで現れていない点にあるのです。
つまり、1日後の74%忘却と1ヶ月後の79%忘却では、記憶の鮮明さで違いが出ているのです。

できるだけ早く復習すると、記憶が鮮明のため忘れていても短時間でよみがえります。
それに比べ、1週間以上経過したあとで復習しても、ところどころ完全に忘れてしまって、初めて記憶した時と同じ時間が必要となるのです。
この違いを、再認可能忘却(さいにんかのうぼうきゃく)完全忘却(かんぜんぼうきゃく)といいます。

つまり、忘れているというのは、すぐに思い出せる状態の忘却と完全に忘れている忘却に分かれるという事です。
ですから、1日後の74%忘却と1ヶ月後の79%忘却では、復習するのに必要な時間が違います。
1ヶ月以上後では、はじめから覚えなおさないといけない状態になってしまいます。

■効率的な復習のタイミングはいつか?

そこで、効率的な復習のタイミングは、
1. 覚えた直後に復習する。(数分間でもOK)
2. 1日後に再度復習する。
3. 1週間後に復習する。
4. 2週間後に復習する。
5. 1ヶ月後に復習する。
(多くの人は、覚えた直後の復習をしていない。)

つまり、完全に忘れないうちに、そして、簡単に記憶がよみがえるうちに、ササッと短時間で復習することが、効率的な記憶法になるのです。

■記憶には熟成期間が必要?

直前に記憶するより、前もって数回に分けて記憶したことを復習することが効率的な記憶法だと説明しましたが、もうひとつ早めに記憶する利点があります。

記憶は、時間をたつことでより理解が深まり、整理整頓されて、脳にとって利用しやすい記憶になります。
この現象は、「レミニセンス」と呼ばれ、寝ている間に夢などをみて、他の記憶とつながっていきます。
(できたてのカレーより、次の日のカレーの方が、他の具材と調和しておいしくなるみたいなものかもしれません。)

ですから、学習した内容がレミニセンス効果により活用できる知識となるには、ある程度の時間が必要となります。
早めの暗記と繰り返しの復習が効果的なのは、そのような理由からです。

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