人・物・金、すべてを伝票と一致させる1対1対応の原則
ものごとを処理するにあたっては、どんぶり勘定でとらえるのではなく、ひとつひとつ明確に対応させて処理することが大切です。
たとえば、伝票なしで現金や物を動かしたり、現金や物の動きを確認せずに伝票のみで処理するというようなことがあってはなりません。
売掛金の入金チェックにしても、どの売上分をどの入金分で受け取ったのかを個々に対応させながら1対1で消し込むことが必要です。
また、生産活動や営業活動においても、「総生産」や「総収益」といった、いわゆる収益とそれを生み出すために要した経費を正確に対応させ、厳密な採算の管理を行うことが必要です。
商品を納品する際、普通は納品伝票というものを起こして、品物と一緒に納めます。
そして、先方から「確かにこの品物を受領しました。」という受領印をもらい、そこで初めて会社の売上げとして計上されるわけです。
NTTの取次ぎ商品やOCNの取次ぎ商品や携帯電話やカウネットなど、若干違うところもあるかもしれませんが、大体そういうシステムになっています。
ところが、中小零細企業の場合、従業員が金庫番をしている経理の女の子に、「今から量販店で○○を購入して得意先まで持って走らなければならないから、ちょっと5万円出してくれ。」または「急ぐから、とりあえず5万円出してほしい。仮払伝票は後で切る。」と言って現金を引き出していくケースがあります。
経理の人にしてみれば、金庫から5万円のお金が出ていくわけですから、そのかわりに「従業員が5万円を引き出した」証明となる仮払伝票が金庫のなかに入っていなければ、辻褄が合わなくなって困るわけです。
お金が動こうと物が動こうと、それには必ず伝票がついてまわるというのが会社の鉄則です。
伝票なしでお金が動いたり、物が動いたりすることが絶対にあってはなりません。
会社の中ではすべてがそうあるべきで、例外を認めてはならないのです。
私がこのことに気がついたのは、従業員を雇うようになってすぐのことでした。
私よりもずいぶん年上の社員がオフィス事業部にいました。
すこしばかり偏った考え方をしておりましたが、私もみんなも最初の頃は非常に信頼していました。
彼はオフィス事業部のコンサル・販売・納品担当だったのですが、パソコンを売って設定をして納品したはずなのに、何ヶ月経ってもそのお金が入ってこないのです。
聞いてみると、「お客さんから支払いをちょっと待ってくれと言われているのです。」と言う。
根が真面目でいい人ですから、そうかと思って私も一応は納得しました。
ところが、その人が3日ほど欠勤した時です。
お客さんから「頼んだ品物が一向に届かない。どうなっているのか。」という連絡を受けたのです。
どうもおかしいと思って、戸惑いながら、ロッカーの中に置いてあるその人の営業カバンを開けてみると、何ヶ月も前に納品したはずの納品伝票がいっぱい出てきました。
納品伝票がそのまま残っているということは、一体品物はどこにあるのか。
本人に訊いてみましたら、こういうことでした。
「お前がパソコンの設定を仕事ができるまでしてくれないから、仕事ができない。」とお客さんから怒られて、慌てふためいて再度設定に行くと、向こうは設定ができたとみるやいなや、すぐに仕事にかかってしまった。
そこで、ついつい伝票に受領印をもらいそびれ、仕方がないので伝票を自分のカバンにしまい込んでしまった。
そういうものがたくさん出てくるものですから、もうびっくりしました。
そこで、その人と一緒にお客さんのところに行って、「これは何月何日に、この担当者が設定をしています。まだ入金されていないようですが…」と説明していきました。
とは言うものの、相手も伝票がないわけですから、経理にも連絡していない。
当然、買掛金にあがっていないわけです。
「設定したパソコンをお使いになったのでしょう?」と言うと、「ええ、使いました。でも、伝票がないからどうしたらいいのか分かりません。」と返される。
もう本当に大変な目に遭いました。
その営業も、自分でお願いに行っていたらしいのですが、気が弱いものですからお客さんに強く言えず、結局そのままにしておいたというのです。
このように、気が弱く頼りない人がひとりでもいると、とんでもないことになってしまうわけです。
この1件で、「納品や設定をしたら先方から必ず受領印をもらってくる」という1対1の対応の重要さに気がつきました。
人・物・金、何であっても、それが動く時は必ず伝票を付ける。
「1対1の対応」というルールは、この時に決まったのです。
コメント
鈴木さん
(2019/09/16 13:52)
まだ伝票での取引をしたことがないのでピンとは来ませんが、この知識を知っているのと知らないのとでは違いがあると思います。
1対1の対応は忘れずに居たいと思いました。