第180回目

経験則を重視する

企業での技術開発やものづくり、営業や経理には経験則が不可欠です。
理論だけでは素晴らしい仕事をすることはできません。

たとえば弊社の営業の場合、商品知識とビジネスマナーを学べば誰でも理解できます。
ところが、お客様の性格や要望、業種や規模、会社の体制や状況、現在の使い方、競合他社の状況をヒアリングしながら商談を進めなければまとめることはできません。

具体的には、お客様の要望はただお安く購入したいのか、それとも作業効率が上がる商品を購入して利益を上げたいのか、それとも新しい事業を興すために購入をするのか、またお客様の購入体制は社長と直接面談をして決められるのか、それとも購入担当者がいて社長の決裁が必要なのか、それとも購入担当者がいて社長が承認してさらに役所(官公庁)の承認が必要なのか、最終的には競合他社はどういう提案をしていていくらで見積りをしているのか、これらのことをヒアリングしながらどう提案をするべきか、どのような構成にするべきか、どのような見積りにするべきかを考えながら商談を進めていかなければ商談をまとめることはできません。

これはある程度ならセグメント(カテゴライズ)できますのでレクチャーできるのですが、最終的には経験則でしか分からない世界になります。
この経験則と理論がかみ合ってはじめて、素晴らしい仕事ができるのです。

この「経験則を重視する」という項目も、前回の第179回目《現場主義はあらゆる部門に通じる》と同じことを言っています。
つまり、実際に自分で手を染めてやってみなければ、製造にしろ、営業にしろ、経理にしろ、経営にしろ、本当に「できる」とは言えないということです。

この経験則を生かして仕事ができるかどうかによって、正社員のレールに乗れる人と外れていく人に別れると言っても過言ではないと思います。

社長や採用担当者はこの経験則を生かして仕事ができる人になってくれるだろうと思って正社員として採用するのですが、思惑から外れることが多々あります。
しかし、今はできなくても経験則を生かして仕事ができるだろうと思って採用したのですから、いずれできるようになると信じて人材育成に努めていくしかありません。

それまでの間は経験則を生かして仕事ができる人がすべての仕事を行うのではなく、仕組みを作り少しずつ仕事をまわして経験を積んでもらい、いずれは経験則を生かした仕事ができるようになってもらわなければなりません。

仕組みをつくるスタッフは経験をどんどん積むので、どんどん大きくなります。
しかし、ここで注意をしなければならないことがあります。

それは、世間一般的によく言われているのですが、一部のできる人と多数の作られた仕組みの中で働く組織人間の多い会社にしてしまうと一時的にはうまくいくのですが、やがて組織は硬直化し行き詰っていきます。
一方、情熱を持ち、理想を求める人材を多数にするいわゆる人間組織の会社は永続的に発展することができるといわれています。

会社としても全員が経験則を生かして仕事をしている会社にすることが一番望ましいので、時期を見て経験を積んでもらうような仕組み作りが必要になります。

人間組織の会社にするためにも、入社間もない方は労働契約書の裏面の「成長チャート」を、入社数年が経過した方は社長賞をお渡しした時につけている「成長チャート」を今一度参照してください。

コメント

川邉さん

(2016/09/16 16:28)
MUJIグラムで有名な無印良品のマニュアル作りは、「誰が読んでも寸分違わず同じものをイメージできる」ようなマニュアルになるよう気をつけているそうだ。

たとえば、「商品の棚は、いつも清潔で整頓された状態に保つこと」というマニュアルがあれば、「清潔で整頓された商品の棚」の写真を掲載したり、「清潔とは、埃やごみなどがない状態のこと」「整頓とは、商品が一列に隙間なく並んでいる状態のこと」など、どんな小さな単語であっても詳細な説明書きをつけている。

このように、どの水準のスタッフにでも同じように理解・実行ができるようなマニュアルが文書化できれば、全てのスタッフがマニュアルに従って、同じ水準で仕事に取り組むことができるはずだ。
弊社のマニュアルは、伝わりにくい文章が多いように感じるので、改善の必要があると思う。


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