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第139回目

うどんの値決めで経営者感覚を身につける

どうして値決めがそれほどまでに大事なのか、簡単な例をあげて説明します。

営業で田舎に出ると国道沿いの普段は絶対に入らないようなうどん屋さんをよく目にします。
お昼時になると、たとえそのような薄汚いうどん屋さんであっても飛び込まなければならないことがあります。

おばちゃんやがんこおやじがやっている食堂はひどくて、「すみません。まだやっていますか?」と言うと、やっと奥のほうからおばさんが「何ですか?」とでも言いたげに、スッと顔を出すわけです。

表に「うどん」と書いてあるのですから、何か食べに来たに決まっています。
「いらっしゃいませ。」とか、「何にしましょうか?」くらい言えばいいものを、怪訝(けげん)な顔を突き出しているだけ。

こちらが「お昼の定食はありますか?」と聞いても、「はあ。何にしますか?」とブスッとしたまま答える。
そこで、カツ丼定食を温かいそばで注文すると、今度はがんこおやじが何やら厨房でゴソゴソやっている。
最初から、もう感じが悪いわけです。

そう思っていると、やがて生ぬるい、見るからにまずそうなそばが出て来る。
食べてみると、やっぱりまずい。
昼のピーク時をちょっと過ぎているとはいえ、1人も客が入っていない、また、おばさんがお茶すら出し忘れているところを見ると、先ほどからずっと客がいなかったことが容易に想像できます。

数ヶ月後、私はまた周辺にお店がないので同じ店に行ってしまいました。
見ると、600円だった定食の値段が750円に値上がりしている。
がんこおやじにしてみれば、600円ではお客さんが来ない、来ないから採算が合わない、これでは困る、というので値を上げたのでしょう。

しかし、そうすると、さらにお客は来なくなる。
つまり、値決めの本質が分かっていないのです。
「カツ丼定食なら1杯600円くらいのものだろう」と、適当に決めているわけです。

そういうケースが、世間にはあまりにも多いと思います。
私は新卒採用をする時、「大学を出て、いっぱしの理屈をこねる社員を雇用していって、本当に会社がうまくいくものだろうか。やはりビジネスの本質が分かっている社員を選ぶべきだろう。」と考え、私の大好物であるカツ丼定食の夏は冷たいそば、冬は暖かいそばの「そば屋」をやらせたらどうなるだろうと考えたことがあります。

まず、そばを作らなければならない。
そばというものは、ダシが美味しくなければ誰も食べてくれない。
そうすると、どうやってダシを作るのかが問題になってくる。
鰹節(かつおぶし)で取るのか、昆布にするのか、いや、鰹と昆布の両方を使っていいダシを取ろうとするのか。
また、安い昆布を使うのか、高い昆布を使うのか。
他にも、だしじゃこを使った方がいいか、鰹節はどんなものを使うか、それらによって、ダシに違いが出てくるだろう。

また、ネギはどこで手に入れるのか。
そして、そばはどうするのか。
ひと玉ずつ売っている生麺を買って来て、そのまま使うのか。
いや、乾麺を買って来てゆがいて、1人前ずつ丸めて使うのか。
いやいや、もっと安くあげようと思えばやはり手打ちだと粉から作るのか。
このように、そばの原材料だけでもいろんな選択があり、そば1杯といっても経営する人によって原価というものが違ってきます。

製麺所でそばを買うと、安いところだと20~30円くらいのものです。
それを、作っておいた美味しいダシに入れ、ネギを刻み、蒲鉾(かまぼこ)も薄く切ってのせる。
その蒲鉾だって、厚く切って1枚のせるよりも、薄く切ったものを3枚広げたほうが見栄えもいいだろうとか、いろいろ工夫できる。

そうして苦労して安い材料を仕入れれば、原価は100円もしないだろう。
そこで売値をいくらにするのかという、値決めに入るわけです。
原価が100円として、それを200円で売ろうが300円で売ろうが、それは勝手です。

しかし、「どの値段なら一番経営がうまくいくのか?」ということを考えなければならない。
さらに、どこで商売をするかこれも決めなければならない。
売れないところに出店しても売れやしない。
スナックやバーなどが集まっているところなら、夜、酔っ払いが食べに来てくれるだろうと、繁華街(はんかがい)の外れにお店を開くものもいるかもしれない。
いや、夜に働くのはしんどいから学生街あたりで学生にそばを安く商売する人もいるだろう。
あるいは、繁華街の女性や酔っ払いが食べにくるのは夜もせいぜい11時を過ぎてからだろうと、11時以降にようやく開店をする要領のいい人もいるかもしれない。

このように、どの時間帯に、どこで何を売るのか、これもその人の才覚次第です。
それ次第で値決めも変わる。
学生街で安く売ろうと考える人は、100円で作って200円で売り、薄利多売で勝負しようとするかもしれない。
あるいは、非常に美味しいそばを作って高い値段を付け、数は売れなくても利幅を多く取ろうという人もいると思います。

つまり、全て「値決め」なのであり、これが経営を左右するわけです。
そういう人が商才の持ち主だと言えるのであって、一番館ではそのように値決めができ、確実に利益の取れる人を正社員として登用し、契約社員さんやパートさんのリーダーとなっていただきたいと考えています。

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