高い目標と一歩一歩の積み重ねから未来は拓かれる
私は、「いずれ世界一に」という、一見、できそうにもない空々しいことを考えながらも、実はどこか醒めたところを持っています。
目標として真剣に考えているのですが、その高い目標を見て走るのではなく、現実に追っているのはその日1日の仕事だけなのです。
高い目標だけを見て走ろうとすると、上ばかり見て足元が見えませんから、溝に落ちてケガをしたり、交通事故に遭うかもしれません。
実際には、朝から約束をした注文の品物を作って届けるために必死に働き、夜遅くまで1日の残りの仕事を片づける、という毎日です。
明日のことなど、とても考えられませんから、その日1日だけを一生懸命に生きたのです。
せいぜい考えても1週間くらい、ものによっては1ヶ月くらい先までは考えていましたが、大半は、1日1日を一生懸命に生きてきました。
「そんなことで会社が大きくなるわけがありません。会社というのは、戦略的に長期プランを立てて、少なくても1年先のプランを練り、戦術論としては毎日毎日の、もしくは1週間単位のプランが要る」ということを、評論家や経営コンサルタントの方々は、みんな言っておられます。
そういうことをたまに聞くと、その時はなるほどと思うのですが、現実には、そんなことは考えられませんでした。
朝から晩までヘトへトになるまで働いて、「やれやれ、やっと1日がすんだ」ということを毎日繰り返していると、そんな長期的なことにまで考えが及ばないのです。
「その日その日が、ただ暮れればいいという会社は大きくなるわけがない。」と経営コンサルタントたちは言います。
しかし私は、「今日1日、一生懸命に生きれば、明日は自然に見えてくる。明日を一生懸命に生きれば、1週間が見えてくる。1週間を一生懸命に生きれば1ヶ月が見えてくる。1ヶ月一生懸命に生きれば1年が見えてくる。今年1年一生懸命に生きれば、来年が見えてくる。見ようとしなくても、見えてくるのだから、瞬間瞬間に全力を傾注して生きることが大切だ。」
これは力のない経営者の苦し紛れなのです。
経営コンサルタントをはじめ、みんなが「会社を成長させるためには、戦略性が必要です。
計画性が要ります。
「目標を立て、具体的な計画を立てるべきです」と口を揃えて言っていました。
けれども、余裕がなく知恵がない私はその日その日を一生懸命に生きて、それを積み重ねていけば将来は見えてくる、と言ったわけです。
私も目標だけは常に言っていました。
ただし、言ってはいますが、そこに至るまでの道筋に脈絡がないわけです。
ただ、「今日1日、一生懸命に生きて1日が過ぎれば、明日は見えてくる。」と言っているわけです。
ところが、毎日毎日の仕事にかまけて、都島区一番から世界で一番にという高い目標を忘れたかというと、決して忘れてはいないのです。
高い目標を自分でも本当に実現できるのかと思いながらも、全くの絵空事とは思っていないのです。
本当に阿呆らしいと思うなら、思いもしませんし、言いもしません。
このようなことを言ったり書くということは、心のどこかで何とか実現したいと思っているわけです。
朝会やコンパをして、みんなとなんとか日本一になるために勉強をしているわけです。
酒を飲むと調子が上がってきて、景気のいいことばかり喋っていますが、それはまんざらデタラメでもなく、私自身は本当にそう思っているのです。
1回や2回なら、みんなも「何を言っているのだ。」と思ったでしょうが、毎回毎回、何十回も聞かされているうちに、従業員も次第にその気になっていくわけです。
しかし、都島区1になる前に、世界1というようなことを押しつけたのでは、現実との差があり過ぎて、「そんな高い山に登れるわけがない。」と思い絶望的になってしまいます。
ところが、「今日1日を一生懸命にやろう」とだけ言ったものですから気楽になって、あまり先のことは意識しないで一生懸命に働けたわけです。
そして、そうした1日1日の積み重ねが、今日の一番館を作ってきたのです。
あまりにも高い目標を掲げると、現状との乖離があり過ぎて、みんなの闘争心が失われてしまいます。
ところが、とりあえず今日1日を済まそうとするものの、完全に目標を忘れたわけではなく、高い目標は潜在意識に入っているわけです。
つまり、目標は忘れてはいないが、とりあえずその日1日を済ませばいいという気持ちで取り組めるから、従業員さんも毎日の仕事を続けられるのだと思うのです。
遥かに遠い目標を掲げながら、自分の歩みがあまりにも遅々として進まない場合には、たいていの人は目標への到達を諦めてしまいます。
ところが、私の場合には、目の前の1日しか見ていません。
頑張って働くと、1日はすぐに過ぎてしまいます。
尺取り虫みたいにノロノロとした歩みのようですが、気がつくと、毎日毎日の歩みが積み重なって、かつては遠かった都島区一という目標も達成する部門ができてきたのです。
「一番館の行動指針」で後に、「偉大な成功も、偉大な仕事も、地味な仕事の一歩一歩の積み上げから」といったフレーズが出てきますが、「一歩一歩の積み重ね」と「高い目標を掲げなさい」というのは、一見矛盾しているように見えますが、そうではありません。
矛盾しているように見えても、それを矛盾としてはダメなのです。
あくまでも高い目標を立てながらも、生き方は一歩一歩、足元を見ながら堅実に歩くことが肝心なのです。
いつも高く掲げた目標ばかりを見ていてもダメなのです。
あまりにも遠い道のりを歩こうと思うと飽きもするし、自分の力のなさを感じてしまって頓挫してしまいます。
高く掲げた目標は潜在意識にしまっておいて、1日1日を着実に歩み続けると、とてつもない所まで歩いていけるものなのです。
コメント
川邉さん
(2015/06/15 13:14)
いくら立派な目標を立てたところで、日々のひとつひとつの課題がこなせないのであればそれは無意味な文言となる。
スポーツの世界でも、日ごろから何の努力もなくいきなり並外れた結果を出せる人はほぼ皆無であろう。
そのことを鑑みても、日々の積み重ねの重要性は改めて言葉にするまでもないことだ。
そういう意味で、堅実/着実な生き方や仕事の仕方が大切だということなのだろうと感じた。
前田さん
(2018/06/27 11:09)
一日を一生懸命に過ごすことが、目標を達成することにもつながるということで、日常でもそうありたいと思いました