時間がなくても意識を集中して考える
私は日頃大変忙しいものですから、「相談にのってほしい。」と急に言われても、なかなかその時間をとることができません。
極端な場合、「30分程度でもいいから話がしたい。」と言ってきても、翌日、場合によっては1週間後くらい先でなければ、その時間が取れないのです。
そのくらい私のスケジュールは厳しくて、15分間ある人と話をし、15分その人と話をしたことを部下に伝えて、また違う人と会って15分話をする、という具合に、30分刻みになっています。
そのような過密スケジュールの場合、今話していた内容がそのまま頭のなかに残ったままだと、次の人と会って話をする時になかなか頭をきりかえられず、効率がよくありません。
ですから、私は次の人と会う前に、今話していた内容を頭の中から全部消してしまうようにしています。
そして次の話を真剣に聞き、結論を出してはまた頭の中を真っ白にし、次の人に会う、というような、離れ業にも等しいことを毎日行っています。
そんなことを朝から夕方までやっていれば、もうクタクタになって頭痛がしてきます。
物理的な運動をしているわけでもないのに、考えているだけで疲れ果ててしまうのです。
それくらい、「考える」ということは大変なエネルギーを消耗するわけです。
さて、私とほんの少しでいいから話をしたいと思っている従業員さんのなかには、たとえば、会社に帰ってきて会えばこれ幸いと私を捕まえて、「この前の件ですが…」と切り出す者もいます。
こちらもなかなか時間が取れていないと分かっていますので、フムフムと聞いている。
しかし、自分の注意は他の方に向いているわけですから、これは「有意注意」ではないわけです。
そのような時は、大体いい加減な応答をしているものです。
それが往々にして、後で大変な問題を引き起こすことになります。
本人は「何月何日、社長に相談したところ、承諾いただきました。」と言うのですが、私には全然記憶がない。
「そんなバカな、私は聞いていない。」と言っても、「相談した時、よろしいと言われましたよ。」と返される。
よく聞いてみると、私が会社に戻ってきた時に立ち話をしました、というわけです。
自分でも若い頃から「有意注意でなければならない」と言ってきたくせに、ついつい部下が可哀想になって、すれ違いざまにでも、話を聞いてあげようとした。
そのために、かえって大変な失敗を招く。
そんなことが何回もあったので、ある時から、私は立ち話で重要な相談にのるということを一切やめました。
そして、「重要な相談事があるなら、まずは私の携帯電話の留守番電話に入れるなり、メールをしてもらい私の時間がある時に返事をする。
それでも解決しない時は、「時間を決めて事務所の隅っこでもいいから、とにかく集中できるところで聞きましょう。」と言います。
つまり、話を聞く時は、すべての意識を集中させなければならない。
何かのついでにちょっと話を聞いて軽く判断を下す、ということは、決してしてはならないのです。
これは、会社の規模に関係なく全従業員にとって必要な姿勢です。
今からでも遅くはありませんから、この「有意注意」を習慣づけるということを心がけるようにしてください。
そうすれば、判断力は必ず研ぎ澄まされていくはずです。
特に、弊社のような小さい会社では全従業員、並びに会社の命運がかかっているわけですから、たとえ細かいことであっても、集中して深く考え、判断を下すという習慣を、ぜひ身に付けていただきたいと思います。
コメント
小泉社長
(2015/08/07 11:57)
第5回目《時間がなくても意識を集中して考える》はいかがでしたか?
少し余談になりますが、日本データビジョン様という人材育成関係に大変強い会社があり、2013年弊社からも数名研修に参加してもらいました。
その研修ではリーダー役と中間役と平社員役に別れて、メモを回してひとつの仕事を達成するゲームをしていました。
そのゲームでリーダー役にあたった人は、用意ドン!とゲームのスタートから質問攻めに遭い、仕事が完了するまで質問攻めに遭います。
そこで、リーダー役の人はリーダーというのは本当に忙しいことを疑似体験することになります。
どんな小さな組織でもいいのですが、まだリーダーを任されたことのない人はぜひ体験してほしいと思います。
少し余談をしましたが、私が担当しているオフィス事業部のお客様は300社くらい、仕入先様と協力関係会社様で30社くらい、スタッフがパート・アルバイトも含めて40名ほどで、お客様は月に平均1度くらいお問い合わせがあり、仕入先や協力関係会社様は週に1度くらい問い合わせがあり、スタッフ8名くらいは毎日問い合わせがあります。
まずスタッフと1人15分お話しすると6時間くらい有意注意でお話を聞いており、さらに30分お話をすれば12時間も有意注意でお話をしていることになります。
さすがに12時間も有意注意でお話をする能力はありませんので、途中でギブアップします。
中小・零細企業の社長というのは、このくらいハードスケジュールのなか有意注意でお話をしながら仕事をしていることを知っておいてください。
油谷さん
(2016/05/18 13:55)
報告、引継ぎとは、相手に話すのではなく伝えなければならない。
ただ正しく伝わったかどうかは認識の問題で、書面に残すことや留守電の肉声で保存する事がいかに大切なシステムであると言う事が理解できた。
小泉社長
(2024/10/08 12:00)