第026回目

経営者の犠牲的精神が社会的な正義を守っている

何の後ろめたさもなく、全力で仕事に取り組むために、弊社はガラス張りで仕事(経営)をしております。
そのような公明正大な仕事(経営)をすると、経営者というのは一番割りが合いません。

株式会社や有限会社の場合は、有限責任のはずですが、日本の金融制度のもとでは、銀行からお金を借りる場合でも、「社長の個人保証が必要です」と言われ、家を担保に入れてでも保証しなければならない、ということになります。
一つ間違うと会社が潰れるだけでなく、自分が担保に入れた家まで金融機関に取られてしまうということにもなりかねません。
そういうリスクを背負っていながら、公明正大な仕事(経営)をしていると、決められた給与以外には収入がなく、役得などは一切ありません。

つまり、責任は山ほど重いのに、従業員からは、「社長は自分たちの知らないところでいい思いをしているのでは」と勘繰られながら、日々の仕事を行っているわけです。
それらを考えると、経営者が一番辛い思いをしているのではないかと思います。
しかも日本の税法は、税率も非常に高く、まるで懲罰(ちょうばつ)的な、高額な税金を取られます。

私はせめて、社長はこれだけの責任を持ち、これだけの仕事をしているのだから、一般従業員の10倍の給与をいただきますということを、従業員に言ってもいいとさえ思います。
仮に、新卒の初任給が16万円だとすると、その10倍で160万円になります。
しかし、5人の従業員を抱えている会社の社長が、新卒社員の10人分くらいの仕事しかしていないかというと、そんなものではないはずです。
おそらく、20人分、30人分の仕事をしているはずですから、300万円や500万円の月給をもらってもいいはずです。
もし月給が500万円だとすると、単純計算で年俸6000万円になりますが、それくらいもらっている経営者はアメリカの中堅企業にはザラにいます。

ところが、日本では、所得税・個人住民税をあわせた最高税率が50%です。
だから日本の経営者は、「公明正大できれいな経営をして高い給与を取っても、どうせ税金に持っていかれるから。」と、新卒社員の数倍にしかならない少ない給与で辛抱し、従業員と会社のために働いています。

そういう犠牲的な精神を持たない人の場合、経営者といっても所詮は人間ですから、みんな欲があります。
「経営者というのは、何と割の合わないものか」と考えてしまい、そこから変なことになっていくわけです。
それでも我々が苦労して稼いだ給与から、国が半分を取るということであり、まさに「収奪」をするわけです。
一生懸命働かせておいて、長良川(ながらがわ)の鵜飼いのように、とってきた魚はみな吐き出さされる。
しかし、それでは誰も働きませんから、せめて半分は呑み込んでもいいよということですが、それでも私は高い税金だと思います。

ガラス張りの経営はしなければいけませんが、それをすればするほど経営者は一番、分の悪い立場に置かれるわけです。
アメリカでは、経営者がそれだけの苦労をし、かつそれなりの役割を果たすのであれば、それに見合う報酬を得ることが認められています。

日本も、少しずつはその方向に近づいていくのではないかという気がしますが、根本的には変わらないと思います。
いずれにせよ、給与の面ひとつをとってみても、日本の経営者というのは非常に立派で、自分の欲のためだけではなく、社会的な正義を守っていると思います。

コメント

川邉さん

(2015/06/15 13:09)
この項に関して特に感想は思い浮かばない。

しかし、近年では社会的責任を放棄し、消費者を裏切るような危うい経営をする大企業(とくに食品業界に多い)が目に付くようになった。
彼らの巻き起こした騒動・事件を目にするたび、我々は彼らのようになってはならないのだと強く感じる。
企業の代表として最も風当たりの強いところに立つのは経営者であるが、従業員も末端とはいえ社会の一員として、社会に果たすべき責任を意識しながら日々正しいことへ向かって歩み続けるべきなのだろう。

松浦さん

(2018/04/24 16:02)
経営者は、基本的に雇われている人間よりも数倍働いていると思います。
人間は、選んだり決断することに消費するといわれています。
だから、言われたことをやっているだけの人より、経営者は数倍大変なのです。

しかし、僕が経営者だったら従業員にもっと働いて、選択や決断をしろとは言いません。
なぜなら選択や決断が得意な人間は大抵経営者になるからです。
従業員には従業員に適した方法で働いてもらった方が効率がいいと思うからです。

良い会社とは従業員と経営者の役割分担ができている会社ではないかと僕は思います。

前田さん

(2018/06/25 12:39)
人を引っ張っていくことにエネルギーが必要ですし、その他にもいろいろ背負ってらっしゃると思うので、報酬が高いのは当然のことと思います。
経営者の方々のエネルギーを見習いたいです。

小泉社長

(2018/09/21 10:57)
過去の偉人達は素晴らしい言葉を残されています。
宮沢賢治のメモ帳に残されていた、「雨にも負けず(雨ニモマケズ)」をご紹介します。

雨にも負けず
風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ
丈夫なからだをもち
慾はなく
決して怒らず
いつも静かに笑っている
一日に玄米四合と
味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを
自分を勘定に入れずに
よく見聞きし分かり
そして忘れず
野原の松の林の陰の
小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば
行って看病してやり
西に疲れた母あれば
行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば
行ってこわがらなくてもいいといい
北に喧嘩や訴訟があれば
つまらないからやめろといい
日照りの時は涙を流し
寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ
褒められもせず
苦にもされず
そういうものに
わたしは
なりたい

(原文) 「雨ニモマケズ」

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラツテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジヨウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ陰ノ
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ツテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ツテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ツテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクワヤソシヨウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボウトヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハ
ナリタイ


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