不良資産を消して健全資産の原則を貫く
一番館では、不良資産を発生させることを厳しく戒めています。
必要な時に必要なだけ買い入れること、必要なものだけを作ることが原則です。
余分なものを買ったり、余分なものを作ったりすると、不良在庫を発生させ無駄な経費を使うことになります。
しかし、万一不良資産が発生した場合には、ただちにこれを処理することです。
一時的には損失を出すことになりますが、目先の数字にとらわれず、勇気をもって不良資産を処理しなければなりません。
これをせずに問題を先送りすると、さらに大きな損失につながります。
経営は常に健全な資産状態で行なわれる必要があるのです。
納品されていない商品が倉庫にたくさんあると、在庫として決算書に計上しなければなりません。
税務署の係員は当然、「これは在庫ですね。売値はいくらでしたか?」と言いながら伝票を見て、「これは1個100円で売ったんですね。これが何個ありますから、きちんと在庫評価をして資産(商品在庫)として上げ、そこから税金をいただきます。」と言うわけです。
「ちょっと待ってください。それはまだ売れるか売れないか分からないものです。しかし、注文が来たらそのまま納められるので、捨てるのはもったいないと思ってとってあるのです。」と言うと、税務署の係員は「それは売れるかもしれないから、とってあるわけでしょう?だったらそれは資産(商品在庫)です。資産(商品在庫)に計上すると利益が増えますよね。だからその分の税金はいただきます。」となるわけです。
税務署の人にしてみれば、資産(商品在庫)にしか見えないわけです。
「今はたまたま注文が途切れているけれども、もし注文があれば売れるんでしょう?」
「いえ、このシステムを使った商品はもう終わりました。客先も、もう要らないと言っています。」
「それなら、なぜ保管しておくのですか?必要ないのだったら捨てたらいいじゃないですか。」
「捨てるのはもったいない。それに、万一また注文が来た時に、商品を確保するのは大変なのです。」
「そんなに値打ちがあるのだったら、立派な資産(商品在庫)です。税金を納めてください。」
そう言いきられてしまいます。
それでも最初のうちは、もったいないので税金を納めてでも残しておこうと思っていました。
しかしよく考えてみると、売れる見込みのないものでも資産(商品在庫)となってしまうと、貸借対照表の資産の部に商品在庫という形で計上されることになり、そうすると利益が増えて結局は所得という扱いになって税金をとられてしまいます。
さらに、保管スペースが限られている弊社では、本当に必要な在庫を置くスペースの確保ができなくなり、本当に必要なものを確保する支障になることもあります。
そこで、将来売れるかどうかも分からないものなのに、税金を納めなければならない、また、そういうものを資産(商品在庫)としてあげておくのはどう考えてみても不健全ではないかと思い始め、そのうちに思い切って売れる見込みのないものはあげてしまうか、捨ててしまおうと決心しました。
しかし、実際には死んでしまっている備品や商品のように、本来なら資産(商品在庫)にあげられないようなものまで資産にあげている会社がよくあります。
一見、非常に儲かったように見えますが、いざ換金しようとすると換金できないもの、つまりお金にかえられない不良在庫・不良資産を抱えているということは、どこの会社にも往々にしてあるものです。
もう1年以内にはとても売れないだろうと思われる商品や、倉庫に3年も積んであったような品物は売っても二束三文にしかなりません。
そのような不良在庫や不良資産は、小泉か責任者に相談をして不要なものはなるべく消す、落とすようにしてください。
この「落とす」ということは、現実に多くの会社でされているようです。
しかし、どんな時に落とすかというと、利益が出ている時です。
利益が出ると税金を納めなければなりませんから、不良在庫はなるべく落とそうというのでどんどん捨てられます。
ところが、利益が出なくなるとこれを落としたら赤字になってしまうから、もう「落とすな」となります。
そのように経営者は、自分の都合のいいように不良在庫や不良資産を「落とし」たり「残し」たりして、決算を調整しています。
これがよく言われる「本当は赤字なんだけど、銀行の融資が受けられなくなるのでとんとんにした。」というやつです。
しかし、ここで大切なことは、不良資産を落とすというのは自分の都合によってするものではなく、利益がどうであれ、常に健全な資産(商品在庫)だけを残すようにするべきだということです。
そういう健全な経営を続けていると、いざ不況が押し寄せてきても財務上余裕があります。
たとえば利益が3%しか出ていなくても、健全資産(商品在庫)だけの3%と不良資産(商品在庫)を抱えた3%では雲泥の差があり、その差は不況の時に大きな違いとなって出てきます。