営業は集金まで責任を持つ
第146回目でお話をしました支払条件の限度を営業に言っておいても、相手先が「5ヶ月だ。6ヶ月だ。」と言うと、弱い営業だと「ウチは最大でも3ヶ月です。」と言えません。
そう言ったら、もう注文がなくなってしまうかもしれないからです。
零細・中小企業の営業は大変弱い立場にありますから、それは言ってはいけないと思いがちですが、実はここが問題だと思います。
では、お客様にどういう言い方をすればいいのでしょうか。
たとえば、営業がお客様に「普通に譲歩して2ヶ月です。さらに譲歩してもサイトは3ヶ月までです。それ以上の取引はできません。」と言ってはいけません。
零細・中小企業は付加価値が非常に低い仕事、つまり下請けみたいな、わずかの口銭で仕事をしているのが一般的です。
その付加価値がない仕事の大半は、商品の仕入れと材料代と人件費です。
その中でも材料代は年度末などの安く買える時にまとめ買いをし、現金決済をしております。
大手の問屋にしても、与信金額があり先に現金決済をしていることが多々あります。
そこで、お客様にこう言ってほしいのです。
「材料の仕入ですが、少しでも安く仕入れるため実は現金仕入れをしています。また、人件費はご承知の通り、毎月給料日にお金を払わなければなりません。われわれのように精一杯値段を勉強して、どこよりもよりよい物を安く提供していると、資金繰りが厳しいのです。ですから、誠にすみませんが、サイト2ヶ月と仰いましたが、私どもとしてはどうしても1ヶ月でなければ会社が回っていきません。なんとか、1ヶ月のサイトで頂戴できませんか?」
お客様は神様ですから、そのお客様に刃向かうようなことを言ったのでは商売ができないと、常識では思いがちです。
しかし、給料を払わなければならないという共通の悩みは相手先も持っているはずです。
そこで、「従業員を養っていくために給料を払わなければなりませんから、なんとかそうしていただきたい。」とお願いするのです。
こうしてお客様にお願いをすることは恥ずかしいことでもなければ、決して無理難題でもありません。
発注する方の情に訴えるように交渉することも、営業の腕の見せ所なのです。
受注から納品、集金まですべてが営業の責任です。
つまり、受注業務や入金処理業務は内勤の営業事務、集金を配達スタッフが行っても、受注から納品、そして集金まで全部営業の責任なのです。
今回は集金業務の責任についてお話をしていますが、よくない会社の営業は何か失敗すると責任を自分ではなくて、他の部署の責任にしてしまいます。
たとえば、「納期は遅れるな!とあれほど言っておいたのに、あいつらは…」という言い訳をしてしまうのです。
こう言ってしまうと会社の信用がどん底になってしまいますので、すべての責任はお客様と直接交渉する営業に持たせ、最終責任を明確にすることで現場に指示を出すことができるようにすることが会社としては良い方向へ進むと考えております。
少しお話がずれましたので戻しますと、集金の場合、そういうことを言ったら注文が逃げるのではないかという恐怖感を持っていることが、実は注文を逃がすもとなのです。
お客様にお願いすることは、注文とは関係ないのです。
そう言ったら、競合先が6ヶ月でもいいと言って注文を取っていくに違いない、注文が逃げていってしまいそうだと思うから逃げられるのです。
6ヶ月というサイトでやっていける企業は、よほど余裕があるなら別ですが、そういう商売をしているところは結果的には長続きはしないと思いますので、自信を持って交渉していくことが必要です。