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第070回目

知識より体得を重視する / 「知っている」ことと「できる」ことを同一視してはならない

「知識より体得を重視する」とは、人から教わったり、本から得た知識よりも、自らの身体で得たものを重視するという意味です。

「知っている」ということと「できる」ということは全く別です。
たとえば、写真の色味の変更をする時の変化率の予測一つをとってみても、この事実はよく分かります。

文献などで得た知識に基づいて、同じ条件でシアン・マゼンタ・イエローの変更を行ったつもりでも、実際に得られる結果は違ってくるということがよくあります。
本の上での知識や理屈と実際に起こる現象とは違うのです。

経験に裏打ちされた、つまり体得したことによってしか本物を得ることはできません。
経験・知識豊富なオペレーターが「シアンがあと0.3プラスかな~」という頼りない言葉もものすごく精度の高い「かな~」であることを知っておかなければなりません。
このことは営業部門であれ、管理部門であれ全く同じで、こうしたベースがあってこそ、はじめて知識や理論が生きてくるのです。

このことを、「写真」を例にとって説明してみます。
たとえば、CD・BF・STBをある比率で混ぜ、均一に混ざるよう撹拌(かくはん)し、ペーパー登録も行い、デイリーや乳剤ナンバー変更もでき、タンク内の液もメーカー指定の温度に設定できたとします。
しかし、本や文献に書いてある通りの原料を使い、書いてある通りの比率で混ぜ、書いてある通りの温度でプリントしても、美しい写真はできません。

それは、ある程度(L判で1000枚程度)ペーパーを通して液をなじませないと、美しい写真はできないからです。
本や文献には、「この補充液をこの比率で混ぜなさい。」とは書いてありますが、その後、どのくらいペーパーを通せばいいのかまでは書いてありません。

また、乾燥の際にも50度~70度とは書かれていますが、具体的な温度は書かれておらず、ペーパーによっては70度で乾燥させるとカールを起こしたり、50度で乾燥させると乾燥不足でくっついてしまったりします。
これについても、本には書いていないわけです。

自分で考え、経験し、進めていかなければなりません。
学校で高度な教育を受けてきた人なら、本に書いてあることくらい全部知っています。
ですから、「この写真は、こういう成分の原料を混ぜて液に何秒つけて、何度で乾燥するとできる。」と言うことはできるでしょう。

しかしながら、今言ったように「知っている」ということと、「できる」ということは別物なのです。
事業を行う上で、自分の専門ではない新しい分野に手を広げようとすれば、専門家を雇ったり、アドバイスをもらったり、ホームページで調べたりすると思います。
ただし、その専門家の言うことも、知識として言っている場合と、実体験を通じて言っている場合と、分けて聞かなければなりません。
それは、写真を作ったこともない、理屈しか知らない人間に、写真を応用した製品を作れるはずがないのと同じことです。

つまり、「知っている」ことと「できる」ことを同一視してはならないわけです。
また、マーケティングでも、大学でマーケティングを学んだ者が現在の流通理論を滴々(滴々)と述べ、「社長、この問題はこうすればいいのです。」と言う。
こちらはそんな勉強などしていませんから、なるほどと感心するのですが、「じゃあ、あなたがやってみなさい。」と言うと、売ったこともないし、頭の下げ方も知らない。
そんな男が売りに行っても売れるわけがありません。
みんな頭でっかちになっていますから、理屈を知っているだけで、あたかもできるかの(ごと)く思いこんでいる。

しかし、それは錯覚に過ぎないのです。
そういうスタッフには実践を通じて、理論を裏打ちさせることが必要だと考えています。
「○○さんがそうすれば売れると言うのなら、売ってみてください。そして売れる証明をしてみてください。」と言って、実践してもらいます。
そうやって自分で体得すれば、理論もありますから、まさに「鬼に金棒」となります。
これは、コンサルタントから経営ノウハウを教わる場合や仕事の進め方についてアドバイスを受ける際にも言えることです。

指導を受けるのであれば、その人にまず実績値があるかどうかを見る。
実績値のないコンサルタントでは意味がありません。
理屈ばかりこねまわすようなコンサルタントにお金を払い、教えてもらうことくらいバカらしいことはありません。
話を聞くなら、実績のある人を選んでください。
きれい事ばかり口にする人ではなく、実際にやったことのある人、自分の身体で分かっている人の話を聞くのなら、それはいいことだと思います。

コメント

川邉さん

(2015/08/01 09:27)

「知っている」ことと「できる」ことを混合してしまうのはよくあることだと思う。
「知っている」だけで終わらせず、「できる」ようにするための実践を重ねていくことが何より大切なのだと感じた。

小泉社長

(2015/08/03 23:40)

第70回目《知識より体得を重視する / 「知っている」ことと「できる」ことを同一視してはならない》はいかがでしたか?

一部の人は気づいているかもしれませんが、キヤノンさんやNTTさんは会社が大きすぎて、現場に出たことのない人が弊社の担当になることがあります。

そういう担当者の話は注意をして聞く必要があります。
逆に、キヤノンさんやNTTさんの担当者の中に、たとえばキヤノンシステム&サポートさんなどのキヤノンの子会社からできる人材がキヤノンマーケティングに引き抜かれて、さらにキヤノンに引き抜かれた人もいます。
こういう担当者の話はよく話を聞くべきです。

私もびっくりしたのが、「○○会社は担当者に決裁権がなく、また担当者も決裁権者に交渉できない人なので決裁権者向けの提案書を作成しましょう。」と言って、見事商談を成立させたことがありました。
こういう人材は、成功体験の引き出しをたくさん持っていて、会社の業種・業態・規模から商談を成立させていく工程が見事に見えています。

こういう担当者のお話は聞く価値がありますので、時間がなくても聞くようにしてください。

前田さん

(2018/12/22 16:58)

経験が仕事を行っていくうえでの大きな糧になるのだなと思いました。


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