きれいな心で願望を描く
「心を高める」ためには、「きれいな心で願望を描く」ことが必要です。
これは、前回で述べたような、高められた心で願望を描こうということです。
「願望」とは、自分の会社をもっと立派な会社にしたい、売り上げをさらに増やして豊かな人生を歩みたい、というような願いです。
そのような願望は、美しい心で描かなければならないのです。
私は、このことを次のように説明しています。
きれいな心で描く願望でなければ、素晴らしい成功は望めません。
強い願望であっても、それが私利私欲に端を発したものであるならば一時的には成功をもたらすかもしれませんが、その成功は長続きしません。
世の道理に反した動機に基づく願望は、強ければ強いほど社会との摩擦を生み、結果的には大きな失敗につながっていきます。
成功を持続させるには、描く願望や情熱がきれいなものでなければなりません。
つまり、潜在意識に浸透させていく願望の質が問題となるわけです。
そして、純粋な願望をもって、ひたすら努力を続けることによって、その願望は必ず実現できるのです。
仏陀は「心に描いた通りになる」と仰っています。
心に思ったことは全部現実として現れるというのです。
私もその通りだとは思うのですが、しかしこれほど証明しにくいものはありません。
少しぐらいきれいな心で願ったからといって人生や仕事がうまくいくはずがない、誰もがそう思います。
実際には、なかなか思った通りにはうまくいかないし、むしろ悪い心がけを持った人や会社の方がうまくいっているというケースさえ、よく目にします。
昔、弊社の顧客にブラストインターナショナル様という不動産屋さんがありました。
その社長はものすごく強くて、従業員を「右向け右の」世界で動かしていてたいへん成功していました。
私もあんな力があればと心底思いましたが、5年くらい経った頃その会社は閉鎖へと向かいました。
後日、同業の不動産屋から聞いたところ「あそこはめっちゃやばい」「あ~なると誰も相手にしない」と言っていました。
また、仕入先を見ると三菱製紙の総代理店のダイヤミックさんは「三菱は親方日の丸で絶対に大丈夫!」と言っていて、その当時は「取引先の写真屋さんを海外旅行に接待できるような余裕のあるすごい会社だな~」「写真屋さんをエコノミーで、ダイヤミックさんはビジネスクラスで移動するような接遇でやっていけるのだから三菱はすごい!」と感心していましたが、三菱自動車のリコールの隠蔽問題や宇宙ロケットの連続失敗などが相次ぐ中、三菱は写真事業からの撤退によりダイヤミックの写真事業部が廃止となり、写真事業部の大リストラで「三菱は親方日の丸」と言っていた担当者もダイヤミックを退社することになりました。
その他、有限会社ほるむさんやビス協和都島店(閉店)や今日亭都島店(火災)や川端(火災)など言い出したらキリがありませんが、だいたい私がおかしいなと感じた5年以内に閉店や大きな事故を起こしています。
しかし、中には本当に良い考え方で人生を歩んでいるのにうまくいかない人や悪い考え方で人生を歩んでいるのに成功している人がいます。
もし、善には善、悪には悪と一対一の対応で結果が現れるなら、悪などはびこらないはずなのですが、そこは曖昧模糊としていて、真面目にやっていても人生や経営は良くならないし、逆に相当な悪でも成功する人間がいるように見える。
そのために、「世の中はおかしい。不公平だ。」となってしまって、私が言うような生真面目な生き方を誰もしようとは思わないのです。
しかし、「因果応報」というように、実際に人生や経営は、心に思ったことと寸分違わず現れてきます。
ただ、スパンが長いわけです。
大体30年くらいのスパンで見ると、帳尻が合うはずです。
心に描いてから結果が出てくるまでが1週間や1ヶ月、長くてもせいぜい1年ぐらいであれば、誰もがもっと心や考え方を大切にするのでしょうけれども、30年くらいかけてようやく結果が表れたり、ものによっては30年たっても結果が出ない、時には死ぬまで出ないこともあるものですから、なかなかそうはならないのです。
1920年頃、イギリス、ロンドンの町に、スピリチュアル(霊的)なものを信じている人達がいて、週末に集まって霊会を開いていました。
そこにはいつも「シルバー・バーチ」というインディアンの霊魂が出てきて話をしていたらしく、その話をまとめた本が「シルバー・バーチの霊訓」というタイトルで10巻ほど出版されています。
これは、シルバー・バーチの霊が精神統一をした人に憑いて、その人を借りて話した内容の記録なのですが、その本を読んだ私は大変驚きました。
シルバー・バーチというインディアンの霊は、「因果応報」について次のような主旨のことを言っているのです。
「現世で生きている時に思ったこと、考えたこと、行ったことは、いいものはいいように、悪いものは悪いように結果として出てくるということを、皆さんは信じてはいないでしょう?それは、あまりにも結果が出てくるまでのスパンが長いためです。しかし、私が今いる“あの世”までも含めた長いスパンで見ると、まったく寸分の狂いもないくらい、相応の結果が出ています。」
つまり、肉体を持って生きている現世だけで考えるのではなく、あの世まで通算してみれば、ものの見事に、因果応報は成立しているというのです。
きれいな思いでなくても、願望は実現します。
人をやっつけてでも、同業者の足を引っ張ってでも、自分の会社を立派にしたいと強く思い、誰にも負けないように努力をすれば、会社は大きくなります。
極端に言えば、欲望の塊や我利我利亡者であっても、成功はするのです。
しかし、それは決して長続きしません。
長いスパンで見れば、その成功は持続するものではないのです。
努力をしない人は論外です。
たとえば、心がきれいで、仏のように、他人のためだけに努力しているという人がいます。
自分の会社はそんなに大きくならなくてもいい、自分も金持ちになる必要もない、他人のために尽くすことこそが私の人生だと心底思っていること自体は、大変素晴らしいことだと思います。
しかし、先ほども述べたように、自分の人生を良くしたいと思っているのに、他人のことにばかり努めていては、自分の人生が良くなるはずがありません。
それを、「社長は利他に努めたら人生がよくなると言っていたではないか」と文句を言う人がいる。
これは、自分の人生をよくするには、自分も含めた従業員、お客様、会社、地域社会が幸せになるように誰にも負けないくらい努力しなければならない、そのことが分かっていないのです。
まずは、この誰にも負けないくらい努力するということが必要です。
それは美しい心で頑張らなければなりません。
他人を蹴落としても自分だけ儲かればいいという勝手な思いで努力するのであれば、必ず没落が待ち受けているはずです。
バブル崩壊後、様々な不正行為が発覚し、その罪を問われている人がいました。
2010年~2012年では村上ファンドの村上社長やオリンパスの粉飾決済問題、船場吉兆の食材の使いまわし事件やライブドアの堀江社長の粉飾決算など、最盛期には、飛ぶ鳥を落とす勢いで次から次へと銀座や大阪にビルを建てて、繁華街を肩で風を切って歩き、野球球団や宇宙開発事業にまで手を広げ、ひと晩に何百万、何千万円と湯水の如くお金を使っていた人が、わずか10年で見る影もなくなってしまった。
そのような例を見ても、自分の欲望だけを満たそうとしてはうまくいきません。
企業に集まるすべての人の幸せを考えなければならないのです。
この一番館の行動指針の項目をすべて納得してできるようになる必要があります。
もし会社が傾けば、会社の将来に賭けて懸命に働いてくれている従業員を路頭に迷わせてしまいます。
なので、オーナー経営者は、そうならないためにも自分が先頭に立って努力しなければならないはずです。
「自分の会社を立派にしたい」という願望は、美しい心で描いているだけに、長いスパンで見れば必ず報われていくに違いない、私はそのように考えて経営をしています。
コメント
小泉社長
(2020/04/26 16:56)
第35回目《きれいな心で願望を描く》はいかがでしたか?
もう少し、「利他の心」についてお話ししてみます。
利他とは、他の人に喜んでもらう、他者を助けるということです。
私が利他について話をすると、「何をきれい事を言っている。お前は商売人で、10%以上の利益率でなければ儲かっているうちには入らないなどと言って利益を追求していながら、一方では人を助けよとは矛盾も甚だしい。人を助けながら経営をやっていたら、10%もの利益など出るわけがない。」と言う人がいます。
実際に、先ほど利他の心の究極とは、自分の命を犠牲にして相手を助けることだと言いましたが、それでは命がいくつあっても足りませんから、一生のうちに何度もできるわけもなく、この究極の「利他」を規範とすることはできません。
しかし、「利他」にはまた別のとらえ方もあるのです。
誰もがみなこの現世に生まれ出てきて、一回しかない貴重な人生を必死で生きています。
だからこそ、この世では森羅万象あらゆるものが一騎に共生し、共存していかなければなりません。
自分も生き、相手も生かす。
つまり、地球にある生きとし生けるもの、すべてのものが
一緒に生きていけるようにすること、それが利他なのです。
そういう意味で、決して矛盾していないはずです。
前田さん
(2018/07/04 19:28)
持続的な発展を遂げるためには、邪な考えがあってはうまくいかないのだなと思いました。
お客様にたいして誠実であらねばならないと改めて認識しました。
宇都さん
(2019/10/28 23:39)
自分の前世や家族のありがたみを実感した時に、ほんとうのきれいな心や徳を積むという事がよりはっきり理解できました。
人生苦もあれば楽もあるので、常に正しい心をキープしていても、良くない事が続く時があります。
そんな時、この考えは心の杖になると思います。
鈴木さん
(2019/10/28 23:39)
「人として良い行いなのかどうか」を見失わないようにしたいと感じました。
お金を持ちすぎて離したくなくて潰れていった成功者は多数居ると思います。
ZOZOTOWNの社長は納税時期になると、“この金額分社会貢献になった。今年も頑張った来年も頑張ろう。”と実感するそうです。
脱税をする輩が居る中でこの気持ちこそが「美しい心」だなと思いました。