動機善なりや、私心なかりしか
大きな夢を描き、それを実現しようとする時、「動機善なりや」ということを自らに問うことは非常に大切だと思います。
自問自答して、自分の動機の善悪を判断するのです。
善とは、普遍的に良きことであり、普遍的とは誰から見ても良いことだということです。
自分の利益や都合、格好などというものでなく、自他ともにその動機が受け入れられるものでなければなりません。
また、仕事を進めていくうえでは「私心なかりしか」という問いかけが必要です。
自分の心、自己中心的な発想で仕事を進めていないかを点検しなければなりません。
動機が善であり、私心がなければ結果は問う必要はありません。
勝算が少しでも見えているのであれば必ず成功するものです。
過去の偉人たちの成功例を見ると見えてきます。
2012年はJALが民事再生法から見事復活し、3年計画の前倒しの2年で再上場を果たし、国からの融資をすべて返済し、見事な復活を成し遂げました。
この誰もやりたがらなかった事業再生を引き受けたのが稲盛氏でした。
稲盛氏は純粋に「JALが破綻すれば日本は大変な事になるので、私でよければ無給で再生に行きます。」と言って、誰もが無理だと言っていたJALを再生させました。
ちょうど同じ頃なのですが、私の場合は2008年父の胃ガンが発覚し、現在のイメージング事業部を一番館が引き継ぐ話が急遽浮上しました。
私は、収支決算書と借入金のにらめっこの日が続きました。
当時、リーマンショックの影響で一番館の本体もボロボロになっており、衰退業である写真事業を本当に引き継いでいいのかたいへん迷っておりました。
借入金を放棄すれば、母が住んでいる自宅がなくなります。
母は、妹が何かあっても戻ってくる家だけは残したいという強い願いがありました。
私1人だけの問題なら相続を放棄し、有限会社ザ・しゃしん屋は破産させて、有限会社一番館で写真事業部を起こしたほうが絶対に金銭的には有利でした。
しかし、かなり厳しいハードランディングでしたが一番館と合併して再建することもできる見通しもありました。
そのような中、良いか悪いかで考えた時、父はこんなにも早く代表取締役を退任するとは夢にも思っていなかったこと、父の依頼に対して融資に応じてくれた金融機関がほとんどであったこと、などを考えると私の力で返済できるのであれば相続を放棄せず、ご迷惑をおかけせずに返済するべきでしたので、有限会社ザ・しゃしん屋は有限会社一番館が吸収合併し、父の個人の借入金は家族で返済することにしました。
2009年11月15日父が他界し、ガンの再発でしたので思わぬ形で保険会社から死亡保険金+αガンの再発入院金の多額の保険金の入金がありました。
非常に厳しい選択をしましたが、「動機が善で、私心がなければ」本当になんとかなるものだと確信した瞬間でした。
その後は借入金が一気に縮小しましたが、ホッとしているのもつかの間で今度はクルーザーの売却がリーマンショックの影響をもろに受け、思った金額で進みませんでした。
クルーザーの保管場所というのは限られていて、保管場所の契約時期の関係で中古クルーザーの売買される時期は毎年3月~4月です。
ご存知の通り、弊社の3月~4月は超繁忙期です。
この時にもクルーザーを今すぐ売却するべきか、翌年に売却するか悩みましたが、今すぐ売却をして1分でも早く仕事に戻ることが「動機が善で私心がない」と判断をし、数千万円もするクルーザーを100万円なら購入してもいいよという方にすぐに売却しました。
しばらくするとイメージング事業部も軌道に乗りはじめ、利益が出るようになりました。
各メーカーさんからは「写真業界で売上げを伸ばしているのは一番館さんだけ」とまで言われるようになりましたので、この選択は間違っていなかったと確信しました。
2011年11月の決算時点では、QSS3702HDクワッドの借入金1本になっていました。
2012年11月の決算時点では、銀行などの金融機関から借入金をしてくれと頼まれるまでになり、お断りするのに大変な状況でした。
この「動機善なりや、私心なかりしか」ということも、先日紹介しました人生の方程式の中の「考え方」の1つにあたると思います。
自分の行動が本当に「利己」から発せられたものではないのか、誤った考え方に基づいていないかを点検するための問いなのです。
ここで出てくる「善」とは、単純に、良いこと、正直なこと、人を助けること、優しさ、思いやりのある心、美しいこと、さらに言えば、純粋な心という意味です。
そういうものを全て、「善」という言葉で表しているのだろうと私は考えています。
つまり、自問自答する場合に、その動機は、美しいことなのか、良いことなのか、人助けになることなのか、優しさがあるのか、人に対する思いやりの心があるのか、そして、その思いは純粋なのか、と聞いていくわけです。
そう考えると、分かりやすいと思います。