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第203回目

心を鎮めれば物事の真髄が見えてくる

一番館の行動指針第201回目でお話をしましたシンプルに見るためにはどうすればいいのかというと、それは禅定(ぜんじょう)、すなわち心を鎮めるのです。

雑駁(ざっぱく)な感覚では、複雑な現象をシンプルに捉えることなどできません。
ところが、座禅を組んだ時のように心を鎮めて、落ち着いた眼で物事を見ると、その真髄が見えてくるのです。

心眼(しんがん)を開く」と言いますが、それは心の眼を開くことにつながっていくのです。
私は少なくとも一日一回、心を静かに落ち着けて物事を考えるようにしています。

松下幸之助氏は、「一級の商いをする人間を育てたい」「町のPanasonicのお店の後継者のために」というコンセプトの元、1970年に松下商学院を作りました。
入塾してくる学院生の平均年齢は20歳前後で、一番若い人で高校中退の子、上は社会経験をした30歳を越える人まで10数歳の開きがあります。
要は「街の電器屋さんの後継者」という資格だけで入塾ができます。

松下商学院では、毎朝5時55分に起床します。
しかし、若者ですから、昼まで寝ていたり夜中まで起きている生活が普通ですが、毎年5月の連休明けに入塾し、入塾した翌日から朝5時55分起床、夜は10時半に消灯します。
元の電源を切るので、寝ないといけない生活に入ります。

この生活を5月~3月の約11ヶ月間続けられます。

朝起きると、まず自分の生まれ故郷に向かって深々と70度の角度で約20秒間の礼をします。
これには自分を産んでくれた両親、育ててくれた故郷の人たちに対する感謝の気持ちを込めて礼をします。

1ヶ月後の6月に、お母様が松下商学院に呼ばれます。
入塾するきっかけは前向きな理由ばかりではなく、無理矢理に行って貰ったなどいろいろな事情があるわけです。

そのような中で、20秒ですが心を鎮めて感謝する時間を持つことで行動が劇的に変わります。

まず全員でバスまで出迎えに行きます。
そして、降りてくるお母さんの荷物を持ちます。
「お母さん、荷物を持ちます。」など今まで聞いたことのない言葉ばかりが出てくるのです。
宿泊棟に案内すると、彼らが枕カバーやシーツを全部かけます。
配膳もすべて彼らが行います。

たった1ヶ月で、何も嫌々とか無理矢理という感じではなくやるのです。
これだけでお母さんは涙でぐしょぐしょです。

それから卒業の2ヶ月前にお父さんを呼びます。
お父さんの前で、卒業後の3年計画を発表します。

お父さんは、聞いているのか泣いているのか分からない状況になります。
「うちのお店の問題点はこうだから、こうしていきたい。」とか「自分は両親に対してこういう恩返しがしたい。」というような言葉を堂々と言うのです。

お茶の席があり、彼らは裏千家(うらせんけ)でお茶をやっているので、お父さんにお手前どおりにお茶を出します。
涙で塩辛いお茶を飲むというのが毎年恒例の行事だそうです。

要は20秒だけでもいいので心を鎮める時間を持つことが非常に大事なのです。

ただ単に頭がきれる、能力のある人が力任せに経営や仕事をしていっても、たしかに一時的には伸びていくかもしれませんが、それは非常に(もろ)いものであって、どこかで必ず挫折し、落ち込んでいくものです。

その差が現在のPanasonicと今はなくなった三洋電機さんとの違いだったと思います。
両者はどちらも大阪に本社を置き同じように成長していきましたが、結果はみなさんがご存知の通りです。

ですから、感謝することから自然に生まれてきた行動のように、慎重に、かつシンプルに物事を捉え、核心をついた仕事をしていくことが必要です。

会社でも、経済界でも、また政治の世界でも、リーダーとなれる人はみな、物事をシンプルに捉える才能を先天的に持っている人だと思います。
また、そうでなければ立派な社会人にはなれないと思います。

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