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第228回目

率先垂範する

仕事をする上で、部下やまわりの人々の協力を得るためには、率先垂範(そっせんすいはん)でなければなりません。
人の嫌がるような仕事も真っ先に取り組んでいく姿勢が必要です。

どんなに多くの、どんなに美しい言葉を並べたてても、行動が伴わなければ人の心をとらえることはできません。
自分が他の人にしてほしいと思うことを、自ら真っ先に行動で示すことによって、まわりの人々もついてくるのです。

率先垂範するには勇気と信念がいりますが、これを心がけ実行することによって、自らを高めていくこともできるのです。
上に立つ人はもちろんのこと、すべての人が率先垂範する職場風土を全員でつくりあげなければなりません。

リーダーたる者、自ら最前線で仕事をしなければなりません。
「その後ろ姿で部下を教育するのがリーダーというものだ。」と思って、私は最初から最前線で仕事をするように努めてきました。

しかし、リーダーが先頭に立つということは本当に理想的なのだろうか、と考える人もいると思います。
戦争では、第一線で歩兵と一緒に苦労しているのは下士官(かしかん)の軍曹たちなどで、総大将は後方で指揮を取るのが普通です。

トップはどこにいるべきなのか。
私は、人を雇うようになりうまくいかずたいへん悩みました。
「リーダー論」などを読んだりすると、「トップは何よりも大局を見誤ってはならない」と書かれています。
会社であれば、経理・教育・人事・総務・営業・または技術、そういう広範(こうはん)な領域を全て見渡して、あらゆることに的確に指示を与えていくのが社長の役目です。
そのためには、全体が見渡せるような高い位置にいて、そこから全軍の指揮を()るのが好ましい、というような意見をそのまま鵜呑みにし、実行している経営者も多くいます。

しかし、私にはどうもそうは思えないのです。
戦争映画を見ていると、最前線で塹壕(ざんごう)を掘って、土砂降りの雨のなか這いつくばり、敵から打ち込まれてくる銃弾の雨を避けながら必死で防戦しているシーンで兵と共に最前線で戦う部隊長などの姿が出てきます。

最前線の塹壕で泥水をすすりながら、ともすれば崩れそうな自軍の兵を叱咤激励(しったげきれい)し、生命の危険を冒してまで最前線に踏み止まる部隊長を見て、「素晴らしいリーダーだ。」と評価する人もあるでしょう。

しかし、その前線は守れるかもしれないけれども、目の届かない別の戦線を敵に打ち破られてしまって、結局は敗走に継ぐ敗走をして全滅してしまうケースもあります。
そうなると、「あのバカな部隊長がいい格好をして最前線で指揮を執り、“勇気もあって素晴らしい部隊長だ”という周りの誉め言葉に酔い、大局が見えなくなってしまって、結局部隊を全滅させてしまったのだ。」と非難する人もあるわけです。

はたまた、後方で指揮を執れば「最前線では互いに弾薬も切れて白兵戦に突入し、敵味方入り乱れて血だるまになって銃剣で戦っている。そのような凄惨(せいさん)な状況も知らないで、後方の丘の上に陣取り、悠々(ゆうゆう)と戦況を見ている。それではいくら戦況の報告があっても、緊迫感が伝わらないために、戦局を見誤るだろう。」と言う人もいます。

後方にいればいいのか、前線に行けばいいのか、私も真剣に考えました。
どちらも真理だと思います。
後ろにいて全軍を見渡して指揮を取るのも真理、最前線で兵と苦楽を共にし、死線をさまよいながら部下を叱咤激励するのも真理。
ただし、どちらかに極端に偏ってはならないということだけは分かりました。

しかしそれでも、リーダーは前線に出て、兵と苦楽を共にするべきではないか。
そう強く思ったのは、日露戦争の乃木希典(まれすけ)大将と大山(いわお)元帥の話を聞いた時のことでした。

されどリーダーは、先頭を切る勇気を持てと。

日露戦争の時、ロシアの軍港であった旅順港(りょじゅんこう)の後方にそびえる二百三高地(にひゃくさんこうち)を巡って、日本軍とロシア軍による壮絶な争奪戦がありました。

二百三高地を占領し、そこに大砲を持ち込んで旅順の軍港を砲撃すればこの戦争に勝てるというので、ときの大将・乃木希典は日本の陸軍を率いて、二百三高地の攻略を図ります。

しかし、すでにそこにはロシア軍が陣地を構え、機関銃がずらりと並んでいました。
三人銃を担いだ日本兵が攻め上がってくると、ロシア軍は機関銃を撃ちまくり、辺りは死屍累々(ししるいるい)としています。
日本軍はただ「突撃!突撃!」と策もなく連日攻め寄せていく。
二百三高地が日本兵の血で染まっていくのに、それでも乃木希典はバカのひとつ覚えみたいに「突撃!突撃!」と繰り返す。
当時日本ではたいへんな非難がわき起こり、「乃木を降ろせ!」とまで言われたそうです。

二百三高地は絶対に攻め落とさなければならない要所でした。
東郷平八郎率いる日本艦隊を攻めんがため、ロシアのパルチック艦隊が北上してくる。
敵が旅順の軍港に入港してくれば、日本はたいへんなことになる。
何としても旅順港を押さえなければならない。
その日本の戦略に従い、乃木希典は懸命に前線で戦っていたわけです。

その乃木大将を後ろから動かしていたのが、当時の満州軍総司令官・大山巌です。
大山巌は二百三高地から遠く離れたところに陣を取り、遙か彼方にドーン、ドーンという砲声を聞いていました。
前線の乃木大将は、日に日に戦力が消耗していく中で必死に戦っています。
そんな中で、大山巌はある朝起きた時に、鹿児島弁で副官にこう言ったそうです。
「今日はどこでいくさがあんどかいな?(今日はどこで戦があるんでしょうか?)」

大山がそれだけの剛胆(ごうたん)な人物だったから日露戦争に勝てたのだというようにも言われていますが、私はそれを聞いてあきれました。
こんな人が指揮官であってはならないと思いました。
中国風に言えば、彼は大人(だいじん)です。
大将はドンと構え、小さなことに動じてはなりません。
ドンと構えているからこそ部下が信頼して動くのであって、リーダーのくせに右往左往して落ち着かないような肝っ玉の小さい人物では話にならない。
もっと剛胆であるべきだ。
それが中国でいう「英雄」なのです。

しかし私は、このエピソードを聞いた瞬間、「後ろにいてはダメだ。自分はとにかく、前へ行って、みんなと一緒に苦労しよう。」と思ったのです。

それ以来、私はこの率先垂範を旨としてやってきました。
たしかに、後ろにいて全体を見渡すことも必要です。
会社全体の最適化は社長にしかできませんし、オフィス事業部やイメージング事業部の最適化は社長がするよりも担当している責任者や主任がした方が早くて的確なこともあります。

しかし、後々それを言い訳に使う人間が必ず出てくるはずです。
つまり、目標を達成できない経験不足の人を責任者にしてしまうと「私は楽をしているのではない。全体を見るために後ろにいるのだ。」と主張するわけですが、それは自分が苦労したくないものだから、楽をしたいものだから言うのです。
前線から逃げて後ろで遊んでいるだけなのに、「全体を見ているのだ。」とうそぶく。
そのような人には、私はこう言いたい。
「お前は何を言っているのだ。仮にもリーダーなら、前に出てきて働いてみろ。お前も行って注文を取ってこい。注文も取れないような人が、人に“注文を取れ”と言うな。」と。

しかし、ずっと前線にいては戦局を見誤まる恐れがあるのも事実です。
ですから、前線で兵を叱咤激励し、みんなと一緒に苦労をしては、後方に取って返して全体を見渡すようにする、という具合に、臨機応変に行ったり来たりすることが必要になります。

よって一番大切な基本は、やはり、社員の先頭を切って自分も仕事をし苦労する。
この率先垂範は社長だけの問題ではありません。
オフィス事業部やイメージング事業部の責任者や主任であってもそうあらねばなりません。
人をアゴで使って自分は偉そうにしているのではなく、管理者の仕事が終わればすぐに現場に出て率先垂範していくようなリーダーとなってください。

コメント

川邉さん

(2015/07/25 18:18)

>どんなに多くの、どんなに美しい言葉を並べたてても、行動が伴わなければ人の心をとらえることはできません。
>自分が他の人にしてほしいと思うことを、自ら真っ先に行動で示すことによって、まわりの人々もついてくるのです。

まさしくそうだと思う。
しかし今は本当に仕事についてほとんど何も分からない状況で、何をするにも不安や恐怖を感じることがままある。

いつかは率先垂範を実践できるようになろうという意識だけは今から持っておきたい。

小泉社長

(2015/07/27 21:08)

長文になってしまい申し訳なかったのですが、率先垂範はいつも迷いながら行っておりますのでいつも反省や考えさせられるものが多くあります。
なのでついつい長くなってしまいます。

具体的にはオフィス事業部に新人が入ってきた時ですが、新人さんはまったく動くことができませんから私が見本を見せることになります。
すると管理者の仕事が1日ストップしてしまいます。
そうするとシフト表ができていなかったり、総務部の見積りや請求書や支払いの承認がストップしてしまったり、イメージング事業部の色味の相談事がストップしてしまったり、すべての部門で問題が発生してきます。
そこで、新人さんの研修をストップして管理職の仕事をすると、新人さんはほったらかしにされたと思うのでしょうか?
回りが見えていませんから不満が噴出して早期退職に繫がってしまう。

本当に悩ましい問題で、本日の率先垂範の問題が現実に発生してくるのです。
世間の社長さんと比べるとどうしても劣る部分がたくさん見えてくると思いますが、人の倍働けばなんとかなると思って今までなんとかやっております。
引き続きご協力をお願いします。

峯村さん

(2016/04/12 22:29)

言い方は悪いかもしれませんが、仕事というものは面倒くさくて当然だという思いで、目の前のひとつひとつの作業に取り組むよう心がけています。
自分がやらなくてもいつか誰かがやるだろう仕事などです。
そうやって能動的に取り組む事で、自分と仕事をコントロールし、リズムをつくり、ひいては充実感や達成感、仕事を好きになることにつながるのではと思っています。
そして他の人にもいい影響を与えるのではと思っています。

前田さん

(2018/11/25 16:55)

忙しかったり、困っている方がいないか、周囲をよく見渡して仕事を行えるようにしたいと思います。


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