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第047回目

完全主義を貫く

よく、90%うまくいくと「これでいいだろう」と妥協してしまう人がいます。
しかし、そのような人には、完璧な仕事、いわゆる「手の切れる写真やサービス」は到底できません。
「間違ったら消しゴムで消せばよい」というような安易な考えが根底にあるかぎり、本当の意味で自分も周囲も満足できる成果を得ることはできません。

営業にしろ製造にしろ、最後の1%の努力を怠ったがために、受注を失ったり不良を出したりすることがあります。
自分自身の努力をさらに実りあるものとするためにも、仕事では常にパーフェクトを求めなければなりません。

この「完全主義を貫く」、または「パーフェクトでなければならない」というのは、私自身の性格もあると同時に「モノづくり」という仕事に従事した経験から言い出したことだったのではないかと思っています。

たとえば写真を作る時、まず印画紙を特殊なレーザーにあてます。
次にCDと水で()いた現像液に写真を浸して発色をさせ、BFと水で溶いた定着液に写真を浸すことで銀を落とし発色の変化を止め、STBと水を溶いた洗い液でCDとBFの液を洗い流し、最後に乾燥させて写真はできあがります。

製品として完成するまでにはデイリーと乳剤ナンバー変更を行い色補正と濃度補正を行います。
次に写真を現像液と定着液と洗い液に浸す時間と温度、写真を乾燥させる温度と時間があるわけです。
さらに、1㎡あたり、現像液は60㎖、定着液54㎖、洗い液250㎖補充するように設定をしたりして、閑散期には液が劣化しないように気をつけ、逆に繁忙期には回転しすぎて酸化防止剤が強くなりすぎないように経験値をいかして調整します。
さらに、日々のメンテナンスを怠ると結晶ができてしまい写真に傷が入ってしまったりします。

さらに、朝一番の温度と湿度であわせたデイリーと乳剤ナンバーはお昼頃になると温度と湿度が大幅に変わっていますから色のバランスが崩れてしまいます。
そこで、再度デイリーと乳剤ナンバーを取り直して色調補正をしてあげなければ良い色の写真はできません。

そして、その間の工程で一つでも失敗すれば、すべてがダメになってしまいます。
それまでにつぎ込んだ材料代から加工賃、電気代、あらゆるものすべてが無駄になるわけです。

つまり、製造の全工程において、たとえわずかの色や濃度のずれというミスであっても、それまでの努力がすべて水泡(すいほう)に帰してしまう。
そういうことを、私たちモノを作る人間は経験してきているわけです。

一瞬の気の休まる間もないくらいの完全主義を貫きパーフェクトを狙っていかなければならない。
これがモノづくりの世界です。

さらに、具体的に写真を例にとれば、たとえばBFと水の配分や原料の一つでも入れ間違えば全部ダメになってしまい、入れる場所を間違ってもいけません。
また、入れる順番や混ぜ方が悪くてもダメなのです。

実際、昔このようなことがありました。
N&Fテクノさんがホースの挿す位置を間違えて本来入らなければならない液が違う場所に入ってしまったために、時間が経つと変色してしまう事故が起こりました。
当時、すぐに気づいたので大丈夫だろうと考えていたのですが、お客様から写真が変色したとクレームをいただいたことで分かったのです。
1滴までなら大丈夫なのか、100㏄までなら大丈夫なのか分かりません。

ですから私は、汚い格好をして補充液を作りながら、「補充という工程ひとつでも、これはたいへんなことだな。すべてのものが完全に行われなければ、自分の理想とする写真は作れない、そのためには、どうすればいいのか。」ということを考えていました。

また、完全主義を貫いていきませんと、ある工程でちょっとした不注意で失敗し、製品がダメになってしまえば、自分の会社に損害が出るだけではなく、そのために納期が遅れてお客さんにまでたいへんな迷惑をかけることにもなります。

弊社には、2010年まではQSSのプリンタが2台しかありませんでした。
佐川急便の出荷時間は16時、ヤマト運輸の最終出荷時間は19時です。
朝一番枚数を確認すると1万枚の注文が入っています。
お客さんはその約束納期に合わせて、次の出荷のためパートさんなどの手配をしていますから、必ずその日までに作って発送しなければなりません。

しかし、そのような時に限って、もうギリギリのところでちょっとしたミスをしてしまって失敗する。
その写真のオーダーが3000枚ほどあると読み込みだけで1時間、プリントに5時間、延べ6時間かかるものであれば、最終出荷の手前で失敗すると、さらにあと6時間かかるわけです。
お客さんにも「あと1日待ってください」と言わなければなりません。
すると、「お前のところみたいな小さな会社に頼んだばっかりに、ウチの会社がお客様から怒られてしまうではないか」というようなことを言われ、営業がこっぴどく叱られます。
そこを、何とか許してもらって半ベソをかきながら帰ってくる。

そういう辛酸(しんさん)をなめてきたからこそ、わずかなミスでも大変なことになると知っているのです。
それ故に、一番館は完全主義を(むね)として今日までやってきているのです。

コメント

峯村さん

(2016/03/18 19:49)

自分が担当するそれぞれの作業において、完全とは何か?もう一度改めて考え直してみて仕事に取り組もうと思いました。


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