第166回目

実際のお金の流れを正確に把握する

商品の経理上の取り扱いルールのことをみんなに理解してもらうための例題です。
最も原始的な商売、分かりやすく言うとフーテンの寅さんがやっているようなバナナのたたき売りをイメージしてみてください。

裸一貫のおじさんが、町にお祭りがあるというので、「よし、今日は手元のお金を元にあそこでひとつ店を張って稼いでやろう。」
ふと考え、近くの市場へ行って5,000円でバナナをいっぱい仕入れ、お祭りをやっている神社の夜店へ行きます。

夜店を仕切っている親方と話をつけ、いざバナナを売ろうとしますが、地面に裸でバナナを置くわけにもいかず、はたと困ってしまいます。

そこで、みかん箱の上に紙でも貼ってその上にバナナを載せて売ればいいと思い、みかん箱をもらおうと近所の八百屋に走っていきます。
「空のみかん箱をくれませんか?」と頼むと、八百屋のおやじさんはその男の様子をジロッと眺めて、普通だったら捨てるのにも困っているくせに「こいつはどうしても欲しがっているな…」と足元を見て、「300円です。」と言います。
仕方がないので、おじさんは300円を払ってみかん箱を買いました。

そして、いよいよバナナを売り始めますが、台を叩いて「さあ!さあ!」とやらないと景気が出ません。

そこで、勢いをつけるためにその辺にある棒を引っこ抜いてきますが、みかん箱の上に新聞紙ではあまりにみっともないし売れそうにない。
大きな風呂敷でも買ってきて、その上にバナナを並べたらいいのではないかと考え、風呂敷を買いに行きます。

1,000円と言われた風呂敷を値切り倒して500円で買い、それを広げてバナナを並べ、やっと商売を始めます。

その日は、5,000円で仕入れたバナナを何とか売り切って、7,000円の売上がありました。
おじさんは2,000円儲かったと思い、今日は良かったなと機嫌良く帰りに500円の牛丼を食べます。

すると翌日税務署が来て、「あなたは昨日2,000円儲けました。儲けの半分、1,000円を税金で納めてください。」と言います。
そこでおじさんは、「5,000円で仕入れたものを7,000円で売ったから2,000円儲ったように見えますが、実は元手がかかっています。みかん箱が300円、風呂敷が500円で計800円の道具を買いましたから、実際の儲けは1,200円です。1,200円儲ったから、税金を取るというのなら分かるけれど…」と、説明します。

それでも税務署の人は、「領収書はありますか?なければ、みかん箱も風呂敷も明日また叩き売りをする時に使うでしょう。それは売るための道具ですから資産ですよ。」と一向に引き下がりません。
おじさんは内心、「みかん箱はどうせ捨てるものだし、風呂敷も破れて使いものにならないのに…」とぼやきますが、税務署の人に「あなたは1,200円しか儲かっていないというが、経理的には2,000円儲かっているんです。それが世の中のルールです。」と言われると何とも反論できません。

普通、経理が分からない人は「2,000円儲かったから、半分の1,000円は税金です。」と言われると、「ああ、そうですか。」と素直に1,000円の税金を納めます。おじさんの場合も、1,000円払うと道具代の800円を引いて200円の儲けしか残らない上に、昨日500円の牛丼を食べていますから、実際には300円の足が出てしまっています。
結局、何も儲かっていないわけです。

経理をよく知らない白色申告をしているような個人事業主さんでは、みかん箱など購入したことの帳簿をつけておらず領収書も紛失してしまっていて、このような経営のやり方をしているケースがよくあります。

10万円未満で購入したものは一括償却が認められており、風呂敷やみかん箱は10万円以下ですから消耗品で落とすができます。
逆に、10万円以上で購入した物は消耗品のような一括償却が認められていないので、10万円以上で購入したものについては資産台帳を作成し、耐用年数から償却率(または額)が算出され、決算時に減価償却額を計算して経費に計上することになります。

また、資産に計上しますと、資産税の対象となる資産が大阪市の場合300万円を超えると資産税を取られることになります。
そこで、資産税は計算が難しく高いので会社はよくリースで購入します。

少しお話がそれましたが、今のようなたとえ話を通じて、強いキャッシュフロー経営を実現するためには、実際のお金の流れをきちんと把握しておくことが最も大切だということを理解してください。

コメント

小泉社長

(2019/05/04 22:24)
会社経営では、贅肉のない引き締まった経営体質を構築することが大切です。
そのためには、売上や利益を生まない余分な在庫や設備を一切持たない筋肉質経営を目指すことが必要です。

業績をよく見せたいがために売れない商品を在庫として計上したり、不良債権を処理しないまま放置していることがあります。
それではいざ不景気がやって来た時に、資金繰りが行き詰まり黒字破産を迎えることもあります。

在庫や不良債権については、運用ルールを設けて厳しく管理しなければなりません。
こうした努力の積み重ねによって、会社は常に健全で強固な経営体質を保つことができると思うのです。

鈴木さん

(2019/09/18 13:17)
企業が支払う税金がどのくらいのものなのかピンと来ないのですが、半分は持って行かれるといった事を聞いた事があります。
税金は納めるべきものですので、それも含めて数字をしっかり管理しなければならないと思いました。


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