お客様からのお問合せお待ちしております
新規の営業のご相談はご容赦ください

第153回目

閉店セールでも利益を確保する

商売をする場合、なるべく安くすれば売れるはずだと直感的に考える方がたくさんおられます。
第152回目の例にとって、お話ししているオフィス事業部の流通の分野でも、「粗利は30%くらいなければダメだ。」と考えている人は多くはないのではないかと思います。

ところが、高い利益を出している会社は、やはりなんとかして30%の粗利を確保しなければ、という姿勢で取り組んでおられるはずです。
スーパーや安売り店で、他の店より10%も20%も安く売っているのを見て、はじめ私は「30%ある粗利を削って安く売っているのだな。」と思っていました。
確かにそのような店もあるかとは思いますが、それではやがて破綻するはずです。

うまくいっているスーパーやディスカウントショップは、割り引いて売るかわりに、仕入れもしっかり値段交渉をして買っていて、やっぱり30%のマージンを創意工夫と誰にも負けない努力をして確保しているのです。

1997年頃、あるスーパーで「5%消費税還元セール」というものをやり、各スーパーがそれに追随しました。
30%のマージンを5%下げて、25%の粗利でセールをしたスーパーもあれば、「5%消費税還元セールをするから、そっちも5%引いてくれ。」と仕入先に言って、マージンを変えずに売っていたスーパーもあったようです。

ところで、面白いことに消費税還元セールの成功に味をしめて、10%引き、20%引きのセールをしたところ、これが売れなかったと言います。
考えてみれば、「20%引き」くらい、普通のバーゲンセールでもやっているレベルです。
それでもあまり売れないのに、「消費税の5%を還元します」と言うと売れる。
つまり、安ければ売れるというものではないわけです。
それをもっと売れるだろうと10%引き、20%引きのバーゲンを行ったスーパーは、結果として売上は増えないし、マージンは減るわけで、たいへんな苦労をしたと聞きました。

また、ご存知のように、ある百貨店が経営不振のため閉店セールを行いました。
お客さんが殺到し、毎日たいへんな人だかりが何日も続いたそうですが、不思議なことに、閉店セールだから売り切れるはずなのに、なぜかそうならない。
そして、その百貨店始まって以来の売上を記録したというわけです。

閉店セールとあって、驚くほど安い値段でどんどん売り、さぞ儲けは少なかろうと思っていたのですが、値引き分は値段交渉をして全てメーカーに負担してもらい、粗利は変えなかったということです。

この例からも、商業資本が強くて産業資本が弱いということがよく分かります。
閉店セールをするにも、たとえば新聞に「銀座○×百貨店閉店セール」と一貫くらいの広告を次から次へと載せなければならない。
それだけで1回1000万円から2000万円の広告代がかかってしまいます。
そういう広告宣伝費をはじめ、いろんな経費を考えれば、30%程度の粗利がなければとてもやっていけないはずです。

そこで、閉店セールでびっくりするほど安く売りますよと言いつつ、その売値は自分のところの粗利を削って出すのではなく、メーカーや仕入先に負担させて、したたかに経営しているわけです。
もちろん、先ほども言いましたようにバカ正直な人もいて、店じまいですからと30%の粗利を確保していた商品を見切って、4割引き、5割引きで売ってしまい、赤字を出すところもあります。
閉店セールといえども、値決めのうまい人はしっかりと利益を確保する、これが経営です。

コメント

川邉さん

(2015/12/13 19:28)

>閉店セールといえども、値決めのうまい人はしっかりと利益を確保する、これが経営です。

百貨店の例は、値決めがいかに大切かがよく分かる話だと感じた。
きれいな心で商売・経営に関わりながら、粗利も確保することができるANAの例のような方向性で成長していくことができたらと思う。


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です