日々の創意工夫が地味な努力の積み重ねを支える
地味な仕事を毎日毎日繰り返していると、飽きてきてだんだん嫌になってきます。
そこで私は、嫌にならないためのコツでもあり、同時に、地味な努力を加速させていく方法を自分なりに考えました。
それは、「創意工夫をする」ということです。
創意工夫と言えば難しそうに聞こえますけれども、それは、今日よりは明日、明日よりは明後日と、必ず改良改善を加えていくということです。
同じ石を積むにしても、荷車で運んでいって積む方法もあれば、何人かでリレー形式で運んでいって積む方法もあるというふうに、いろんなやり方を考えるのです。
今日はこんな方法でやってみる。
明日はさらに能率のいい方法を考えていく。
そういうことを私は連綿と続けてきました。
創意工夫をしながらやっていくと、たとえ地味で単純な作業であっても、昨日よりは今日と少しずつ向上していきますから、仕事の面白味も変わっていきます。
結果として、このことは、仕事に飽きないようにするための工夫にとどまらず、生産性が徐々に向上し、やがては大きな飛躍をもたらしてくれるのです。
弊社は、バラエティーに富んだハイテク商品を取り扱っております。
たとえば、携帯電話ではソフトバンクを取り扱っていて、iPadやiPodやiPhoneを取り扱いしています。
ほんの10年くらい前までは、通信機器を扱うような会社ではなかったのに、今ではスマートフォンやタブレットを取り扱う会社になっております。
そのような取扱商品のルートはもともとあったものではありません。
また、iPhoneやAndroidのスマートフォンからの写真の注文に関しても最初からできていたわけではないのです。
創業から今日まで、毎日毎日少しずつ改良改善を重ねていった結果、そのようなハイテクな商品を取り扱い、その販売した商品から注文をいただけるようになったのです。
全員が少しずつでもいいから工夫をする、その集積が、弊社の広範な商品アイテムとなっているのです。
たとえば、繊維関係の縫製工場を経営しているとします。
メーカーからこういうものを作ってくれと言われて、型紙など必要な材料をもらい、裁断して縫う。
このような加工を、5人ほどの社員を雇ってやっている会社だとしましょう。
工業用ミシンを5台並べ、一枚縫ったらいくらという賃加工で従業員に工賃を支払う零細企業というわけです。
それでも、たとえばボタン穴を加工するにしても、この前まではこうやってミシンで縫っていたけれども今度はこうしてみようというふうに、いろんな工夫を試みるのです。
新しいことに挑戦すると必ず行き詰まって「これはどうしたらいいのだろう。」ふと考えることになります。
そうすると、その解を求めて先輩や同業者などに「ボタン穴を加工するところがうまくいかないのだけれども、何かいい方法はないでしょうか?」と訊きにいきます。
友達に会っても同じように訊きます。
もし大学で縫製のことに詳しい人がいれば、そういう先生にも訊いたりします。
いろんな人に訊くうちに、「それだったら、繊維産業ではないけれども、こういう産業で同じようなことをしているところがありますよ。」などと教えてくれる人に行き当たります。
そこで、教えられたところに行ってみると、まったく業種は違うけれども、同じようなことを思いもかけない方法でやっているわけです。
「あっ、なるほど!こういう素晴らしいやり方があったのか!」と気がついて、それを自分のところに導入し、改善していく。
そういうことを次から次へとやっていくと、それまでは型紙や布地を支給してもらって裁断と縫製を行い、1枚当たりいくらというふうにただの賃加工をやっていたのが、ミシンの縫い方をどんどん工夫していくうちに、いろんな縫製技術を身につけた専門業者になっていくのです。
すると、柔らかい布をミシンで縫製するだけではなく、強力な工業用ミシンを導入して、非常に堅い衣料、たとえば革ジャンみたいなものまで縫えるようになる。
そのうち、「陸上自衛隊用で強靭な布で作った服が要るらしい。」というような話を聞きつけては、「私のところではこういうものが縫えるのです。」と名乗りをあげ、新しい注文をもらってくる。
そこでも新しい技術を教えてもらい、自分のものにしていく。
このように、次から次へと芋ヅル式に技術を身につけていくわけです。
つまり、大学などで得た学問ではなく、人から教えてもらう耳学問によって技術は進んでいくのです。
大学も出ていないどころか高校もやっと出たという程度のスタッフでも、こうやって知恵をつけていけばいいのです。
そうやってオフィス事業部は競合がひしめき、イメージング事業部は衰退業種であるにもかかわらず今の一番館があるのです。
Panasonicの創業者は小学校すら出ておられず、すぐに丁稚奉公に行かれました。
その後は、もっぱら耳学問で知識を伸ばしていかれたのです。
なぜ耳学問だけで伸びたのかというと、そこに「創意工夫」があったからです。
「何でや?」と常に疑問に思い、そこから工夫を重ねていく。
このPanasonicの創業者の精神が、松下電器をあれだけの大きな企業にしたのです。
地味な努力を積み重ねることが大切です。
その積み重ねの中で創意工夫をし、改良改善を続けていくことが、中小零細企業から大企業へと変身を遂げていくただひとつの方法だと考えています。
コメント
小泉社長
(2015/07/06 13:29)
第52回目「日々の創意工夫が地味な努力の積み重ねを支える」は、新卒採用時の国語のテスト問題となっています。
Q1. 創意工夫とはどういうものですか?
Q2. 創意工夫を行うとどのような結果が生まれてくると言われていましたか?
Q3. あなたが創意工夫を行い、良い結果が生まれた経験ありましたら教えてください。
川邉さん
(2015/07/15 15:28)
弊社のイメージング部門においても6号機の紙詰まりや4号機のペーパーに出る押し傷(筋)など、毎日必ずと言っていいほどトラブルが発生しているが、先輩方はつぶさな観察や試行錯誤からそれらの問題を紐解こうと努力を重ねている。
地道な努力・丁寧な観察から生まれる創意工夫はとても大切だと感じた。
小泉社長
(2015/07/27 21:11)
改善・改良をどのように取り組んでいるのか調べていた時、トヨタ自動車の改善改良の中で問題を発見してから1年かかるお話があったのですが、弊社の現状とまったく同じなのです。
トヨタ自動車さんはどのような考えですばやい対応ができるようにされていったのか、時間があれば参考にしてください。
https://www.toyota.co.jp/jp
峯村さん
(2016/03/25 20:06)
日々の業務の忙しさを言い訳にせずに、一つ一つの作業について真剣に考える必要があるとあらためて感じました。
前田さん
(2018/08/15 15:34)
日々の業務をただ行うだけではなく、何か改善点はないかなど意識したいと思います。